高知県産品やECサイト情報をご紹介!!
高知県産品は何かと尋ねられて、ワインを連想する方はあまりいらっしゃらないでしょう。実際にワインの主原料となるブドウの生産量をみても、高知県は決して多くありません。「酒國・土佐」の異名をとるほど、酒といえば日本酒という文化が根付いた土地でもあります。しかしながら今、高知県内のワイナリーが高知県産のブドウを使って醸造したワインがにわかに注目を集めているのです。
一見何の親和性も見いだせない高知県とワインですが、実のところ県内にはブドウ作り・ワイン造りの第一人者をして「ワインの名産地であるブルゴーニュ地方にも負けない」と言わしめた石灰の土壌があります。保水性に富みpHが高いことから、ワイン向けの良質なブドウを育むといわれる石灰質土壌。寒暖差が生じやすい高知県山間部の気候もまた、高品質なブドウを栽培するのに適しています。
もしかすると高知ならではのワインを醸造することができるかもしれない。そう考えてアクションを起こしたのが、井上ワイナリー 株式会社の代表取締役 井上孝志さんです。現在はブドウ栽培から関わり「井上ワイナリー のいち醸造所」にてこだわりのワインを醸造。醸造所はワイングロッサリーも備えており、高知県産のものを中心にワインに合うアイテムを取り扱っています。高知素材をおつまみに仕立て、ワインと出会うマリアージュを楽しんでほしいと語る井上さん。高知県産のブドウとそこから生み出されるワインの魅力について詳しく伺いました。
高知県南国市にある、江戸時代から続く石灰鉱山。採掘される石灰は純度が高く良質で、上方や江戸においても「土佐石灰」として重用された。この地をお膝元に140年余も石灰の加工・販売業を営む井上石灰工業 株式会社の代表取締役も務める井上さん。自社の主力商品であるブドウ栽培にも使われる「ICボルドー(殺菌剤)」を取り扱っていたことから、その市場拡大を目的に東南アジアでのブドウ栽培普及を推し進めることとなる。
東南アジアでの栽培普及に一定の成果が出たころ、知り合いの育種家から「高知でもブドウを作ってみたら」と提案を受けた。雨量が多すぎるといった懸念もあったが、教えを請いながらブドウ栽培に着手。高知県の気候に合った品種や栽培方法を選ぶなど工夫を重ねたうえで、5本の木にブドウを実らせた。手塩に掛けて収穫したわずかなブドウ。これを原料にワインの試験醸造に至ったという。
展望台テラスに佇む、代表の井上さん
井上さんは試験的に仕上げたワインを口にするなり、一定の手ごたえを感じたそうだ。味は荒削りで澱(おり)も見られるが、これはいける。ワイン通の知人からも好評を得て増産を決めた。とはいえ、とりあえずブドウが育ってそれなりのワインが仕上がるだけでは意味がない。高知らしい、高知にしかないワインを造りたい。どうすれば他のワインと差別化できるのか。思案の末に行き着いたのが「鰹のタタキ」という切り口だった。
高知県のソウルフードとして名高い鰹のタタキ。その美味しさは県内外に知れ渡っている。鰹のタタキに合わせて楽しめるワインを造ってはどうか。井上さんは「鰹のタタキに合う赤ワイン」というキャッチフレーズを掲げて高知ならではのワイン造りを進めていった。
仕上がったワインを高知大学に持ち込み、食べ合わせの良さを測定できる機械を用いて鰹のタタキとの相性を分析したところ、100点満点中98点を獲得。井上さんの手掛けたワインに鰹のタタキは合うと客観的にも証明された。初めは「鰹のタタキにワイン!?」と懐疑的だった周囲の人たちも実際に飲んでみると「なるほど。これはいけるね」と唸り、意外な好相性に驚いていたという。
山の頂にある、のいち醸造所
せっかくワインを造るのであればブドウの品種を増やしてプロモーションの仕方も工夫したい。そう考え、プランニング会社と共に「土佐の七雄」になぞらえたワイン造りのコンセプトを構築する。戦国時代、土佐には長宗我部氏をはじめとする7つの勢力が並び立ち、それぞれの所領を治めながらしのぎを削っていた。これらの所領をもとに高知県を7ブロックに分け、各エリアの特色を生かしたワインを造ろうというのである。
そこに住む人々や自治体とも協力し合って各エリアに圃場を整備。各所の気候に適したブドウの品種やその土地の特産品に合う味を見極めながら、新たなワインを考案していった。現在すでに7エリアすべての味が出揃っている。各ワインにはそれぞれの地名を冠しているため、地元の人が思い入れを抱きながら楽しめるのはもちろん、お土産や贈り物にも最適だ。
今後屋上テラスも活用したイベントも計画されているそう
井上さんがワイン事業を開始したのは2012(平成24)年のこと。その後は山梨県のワイナリーに委託する形で醸造を続けていたが、2021(令和3)年には「井上ワイナリー のいち醸造所」が完成した。一番良いタイミングで収穫したブドウを原料に、地元のワイナリーでワインを造る。栽培から醸造・販売に至る全工程を細やかに管理できるようになった結果、ワインの品質も格段に上がったという。
現在、井上ワイナリーが手掛ける個性豊かなワインの数々は国際的なものも含めて幾つもの賞に輝いている。周囲の反応を見ても、当初は「高知県でブドウやワインができるはずがない」「道楽としてやっているのではないか」といった否定的な意見も目立ったが、実直に取り組み続けていると好意的な声が多く届くようになった。
ワインのテイスティングもできる店内
高知龍馬空港から車を15分ほど走らせた三宝山の一画。かつては風力発電の風車が立ち並んだという高台にて、醸造所は稼働している。車で坂道を上っていくと一気に視界が開けて醸造所が姿を現す。太平洋を一望できるロケーションも圧巻だ。
醸造所を訪ねると、ワイン好きが高じて井上ワイナリーに転職したという壬生幸希さんが出迎えてくれた。井上さんの思いに共感し「地域に寄り添うワイナリー」を盛り立てる一翼を担っている。併設のワイングロッサリーには県内各所から取り寄せたケーキ・ナッツ類・缶詰など、ワインに合わせて堪能したい魅力的なアイテムがずらり。
最近は空港が近いこともあって県外はもとより海外から訪れる観光客も多く、壬生さんも高知のワインが浸透してきたと身をもって感じているという。そんな壬生さんが一番好きなワインは「山北 アルバリーニョ」。石灰土壌の山北で育てられた白ワインで、芳醇な香りが堪らない逸品だそうだ。
お気に入りの「山北アルバリーニョ」と壬生さん
井上ワイナリーの商品はのいち醸造所や県内の産直市場に加え、高知県アンテナショップやオンラインショップなどでも買い求めることができる。需要の高まりを受けて海外販路開拓も視野には入れているが、すでに供給が追い付かない状態で、圃場の拡大に着手しているそうだ。
今後の展望について井上さんに伺うと、ワインフェスティバルを開催したいとの答えが返ってきた。すでにワイナリーの会員を対象にしたワインメーカーズパーティーなどは実施しているが、改めて人が集える場を創出することの価値を思い、地域を盛り立てるようなイベントを開催できればとのビジョンが明確になったという。着手から現在に至るまで、一貫して地域に寄り添いながら造り上げた高知発のワイン。1本1本の背景にあるストーリーに思いを馳せながら味わってもらいたい。
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