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青のりの中で最も香り高く、最高級品種ともいわれる「すじ青のり」。乾燥させたものを振りかけると、普段の料理がより風味豊かに仕上がります。近年お好み焼きなどにかける粉末加工品はあおさ粉などが主流になっていますが、青のりとあおさは全く別の海藻。すじ青のりの繊細かつさわやかな香りは独自のものであり、鮮やかな緑色と口どけの良さも相まって、数ある海藻の中でもその存在感は際立っています。
すじ青のりは海と川の水が混じった汽水域に生息しています。かつて高知県の四万十川はすじ青のりの一大産地であり、実に国内90%以上のシェアを誇っていました。しかし、河口部の水温上昇に伴って収穫量が激減。2020(令和2)年には出荷できなくなってしまったのです。
そのような中、海藻の採取や研究に取り組む「シーベジタブル」は、地下海水を用いたすじ青のりの陸上栽培に着手。独自に開発した設備や生産ノウハウにより、高品質なすじ青のりの安定供給を実現しました。その希少性と美味しさから国内外で取り引きされるというすじ青のりの魅力とは。シーベジタブルの拠点マネージャーを務める溝渕康三郎さんに詳しく伺いました。
高知県安芸市に本社を置き、県内に3か所の生産拠点を構えるシーベジタブル。そのうちの一つである高知市内の春野漁港にある陸上栽培施設を訪ねた。屋外にはすじ青のりの成長度合いによって使い分けられる大小の水槽が並ぶ。藻類の種苗生産を行う研究室にて1か月ほど育ったすじ青のりが各拠点へ運ばれ、さらに1か月ほどを経て収穫に至るという。
太陽の光が満遍なく当たる広い水槽を覗くと、緑色に輝くすじ青のりの藻体が見える。自然界では岩場や網に密着して成長するが、水槽内では1本1本の藻体が互いに密集しながら星のようなフォルムを形成。光合成により放射状に伸びて色合いも濃くなっていく。
各水槽は常に野外にある。清浄でミネラル豊富な地下海水を加えてかけ流しているので自然に近い状態だ。それだけに細やかな目配りは欠かせない。日照や水温など好条件が揃うと一日で倍に成長するため、適切なタイミングで大きな水槽へ移動させないと過密状態になり、生育不良につながるケースもある。激しさを増す気候変動の影響を受けながら、いかにして藻体に快適な環境を通年維持するか。すじ青のりの陸上栽培を進める上で一番の課題という。
春野漁港にある陸上栽培施設
十分な光と栄養を吸収して育ったすじ青のりは人の手で丁寧に収穫。大敵である珪藻や異物は、すじ青のりを傷めないよう優しく洗って除去している。適切に異物を取り除くことができるのは人の手を介しているからこそ。微生物の検査なども受け、品質や安全性が証明された商品に仕上げていく。
その名のとおり青々とした筋状の見た目が美しいシーベジタブルのすじ青のり。新鮮なまま生産拠点内で乾燥させるため、すじ青のり本来の雑味のない香りが保たれる。実際に天然のものと見比べてみても、ほぼ区別がつかないのだとか。しかし、食べ比べると別物で、拠点マネージャーとして栽培に携わる溝渕さん自身も「初めて食べたときはあまりの香りの良さに驚きました」と語る。
拠点マネージャーの溝渕さん
シーベジタブルの商品はオンラインストアでも買い求めることができる。「そのまま干した すじ青のり」は最上級の香りを存分に楽しめる逸品だ。すじ青のりそのものの風味が立っているからこそ余計な手は加えない。乾燥させたすじ青のりをひと摘み振りかけるだけでも料理の香りや見た目が華やかになる。口に含むとすぐに実感できる香り高さはもちろん、噛むほどに広がる旨味も堪能したい。
素材の価値をそのまま生かした加工品は幅広い料理と相性が良く、使いやすいのも特徴だ。卵焼きに混ぜ込んだり、バターを使って焼いた魚に加えたり。シーベジタブルは料理人とタッグを組み、すじ青のりを使ったさまざまなレシピを提案。新たな食べ方を発信することによってすじ青のりをより多くの人に知ってもらい、その価値をさらに高めようと注力している。
シーベジタブルの商品ラインナップの一部
創業当初よりすじ青のりの価値に着目していたシーベジタブル。同時に天然物の収穫が難しくなっている状況を危惧し、海藻食文化を繋ぐためにも量産化を目指して歩み始めた。現在すじ青のりにまつわる一連の取り組みは軌道に乗っており、シーベジタブルの運営を支えているとのこと。すじ青のりを軸にシーベジタブルの基盤を固めながら、海面でも海藻を育てることで、海の環境保全に寄与したいと前を見据える。
1年半ほど前からこちらの拠点で働く溝渕さんは高知県南国市出身。県外の大学に進んだものの友人から掛けられた「帰る地元があるっていいね」との一言に心を動かされ、いずれは高知県に戻りたいという思いを抱き続けていたそうだ。現在の仕事に就く前は岩手県陸前高田市にて震災復興プロジェクトに従事。その際、陸前高田市に新拠点を開設したシーベジタブルと縁が繋がった。「昔は四万十川などで地元の産業としてすじ青のりを収穫できていたんですけどね」と語る溝渕さん。地元高知県への愛着を胸に、特産品であるすじ青のりと向き合う日々を送っている。
すじ青のりだけではなく、さまざまな海藻の可能性を見出している
シーベジタブルの商品は高知県内のマーケットなどでも販売されている。ここのところは大手百貨店に期間限定で出店する機会も増えたそうだ。その結果、県内外の業者から「シーベジタブルのすじ青のりを使った独自商品を作りたい」といった声が届くようになったとのこと。現在はその土地ごとの特色を生かした商品展開を進めたいとも考えている。
既に全国に生産拠点を30か所構えるなど、シーベジタブルの取り組みはより大きなうねりになりつつある。香りも栄養も豊かで「海の野菜」ともいえるすじ青のりを多くの人に届け、海藻が野菜と同じように日常の食卓を彩る光景を作りたい。社名に込められた思いのとおり、すじ青のりの可能性はまだまだ広がっていきそうだ。
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