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よさこい祭りには欠かせない鳴子 よさこい祭りには欠かせない鳴子

心で作る高知の鳴子工場

1954年に高知で誕生し、今では国内で200カ所以上、海外では34の国と地域で踊られている「よさこい」。そのよさこいで踊り子が両手に持つ楽器が鳴子(なるこ)だ。 高知県では毎年8月に、約18,000人の踊り子が華やかな音楽と鳴子の音を街中で響かせる「よさこい祭り」が開催される。

時代とともにバリエーション豊かに変化していくよさこいだが、鳴子を持って踊るという点は誕生以来変わらない。高知のよさこいは鳴子なくして語ることはできない。

今回は鳴子を心を込めて作り、よさこい祭りの裏方としてその歴史と伝統を支え続けている 「やまもも工房」の公文 佑典(くもん ゆうすけ)さんに話を聞いた。

Contents

よさこい祭りには欠かせない鳴子

華やかな音を響かせる鳴子は、元々は農具の一種であり田んぼや畑で鳥や獣から米や作物を守る道具だった。 今ではよさこい踊りには欠かせない楽器であり、高知県ではスポーツ応援や祝い事での鳴り物としてもよく使われている。伝統的なデザインは「朱色の台に黒と黄色のバチ」だが、よさこい祭りでは、華やかな衣装に合わせたオリジナルの特注品も多く見られる。
やまもも工房でも多くの特注品のオーダーを受けており、毎年冬からよさこいシーズンまで、ほとんど休みなく鳴子作りに取り組んでいる。

よさこい祭りを支えるやまもも工房

1973年10月26日に設立し、今年で52年目を迎えるやまもも工房は、札幌市のYOSAKOIソーラン祭りをはじめ、日本各地によさこいが広がったことをきっかけに、鳴子の自社製造をスタートした。現在、従業員はわずか6人で、繁忙期には多数の鳴子を製作。その数は年間で2万本を超えるという。

現代表の公文さんが、やまもも工房に入社したのは2004年、26歳の時だ。現在は2代目社長として従業員の方々と共に高知のよさこいを支えている。今は裏方として支えていきながら、いつかは自身も踊ってみたいという。

鳴子への思いを語る公文さん

やまもも工房の鳴子

やまもも工房の鳴子は99.9%以上、高知県産のヒノキを使用している。まさに“地産地消”を体現した、地域に根ざした鳴子だ。

時代に合わせて変化するよさこいと鳴子のニーズにあわせて、やまもも工房の鳴子も少しずつモデルチェンジが行われている。
”スペシャル鳴子” ”片面鳴子” ”花鳴子” ”鳴る鳴子”はやまもも工房が考案したオリジナル作品だ。
”スペシャル鳴子”は、持ち手の長いスマートな形が特徴。持ちやすく、音も鳴らしやすいように改良されている。
”片面鳴子”は、バチが片面のみについている鳴子。バチがついていない面に焼き印やプリントをすることができるため、デザインの幅が広がるのが特徴だ。徐々に踊り子たちの間でも浸透していき、よさこい祭りでも使われるようになった。印刷面が広く使えるため、お店の卓上POPや結婚式の席札など、幅広い用途で利用されている。
”花鳴子”は、踊る時以外でも楽しんでもらいたいという思いと、先代の奥様がお花好きということから考案された。高知県内の色々なお店に飾られており、観光客からもお土産品として人気がある。
”鳴る鳴子”は、鳴子の形と素材はそのままに、鳴子の音をより大きく、遠くまで響かせるように設計された次世代の鳴子だ。スリットを入れることで音が共鳴し、鳴り響くデザインになっている。
やまもも工房では、鳴子をモチーフにしたアクセサリーも作っている。鳴子のピアスかんざしなど、よさこい祭りで身に着けられるアクセサリーは踊り子からも人気だ。

6人で行う職人技

2025年8月に開催された第72回よさこい祭りには188チーム、約18,000人の踊り子が参加した。そのうち、約50チームがやまもも工房製の特注の鳴子を使用している。また、カナダで開催される北米国際よさこい祭りに参加する踊り子たちからも依頼を受けている。なぜこれほどまでに人気があるのだろうか。
その人気の理由のひとつとして、技術と経験をもつやまもも工房だからこそ実現できるデザインの幅広さが挙げられる。
鳴子のデザインを決める際は、お客さまと話し合いながら出来上がったイメージを画像化する。イメージが固まっていない場合は、デザインツールを使ってイメージのすり合わせを行う。完成イメージを共有することで、より一層お客さまの理想を具体化することができる。

また、鳴子作りに取り組む職人の技術もやまもも工房の魅力だ。
例えば、鳴子の持ち手に焼き印を入れる作業では、木の状態を見極めながら1つずつ手作業で行う。
職人は「鳴子は踊り子から一番近くで見えるから、綺麗なものを作りたい」と語る。
わずか6人でこれだけの質の高い鳴子を作り上げられるのは、まさに”職人技”のなせるところである。

そんなやまもも工房が今まで受けたオーダーの中で最も印象深いのは、「チーム結成8年目にちなんで鳴子のバチを8本にしたい」というものだったという。鳴子のバチは通常3本である。よさこい祭りの間、踊り子が両手に持って激しく踊ることを踏まえて、できるだけ軽く、かつ壊れないデザインが求められた。さらに、これまでのチームの歴史を表現するためにカラーリングにもこだわりがあり、過去に例のないほど大変な作品となった。 「どんなに手間がかかっても、希望に沿ったものを作りたい」、その一心で作り上げたと公文さんは当時を振り返った。
こうした鳴子作りにかける職人の情熱こそがやまもも工房の一番の魅力であり、やまもも工房の鳴子が県内外の踊り子たちに選ばれている理由ではないだろうか。

バチが8本の鳴子

鳴子を作り続けている理由

直接関わる機会がない方にとっては、よさこい祭りは無くても生きていけるもの。でも自分にとっては、鳴子やよさこいは人生の一部になっている」と公文さんは教えてくれた。

コロナ禍以前は、全国から鳴子の注文があり、ひたすら鳴子を作る生活だったそうだ。しかし、コロナ禍でよさこい祭りが中止になり、鳴子の注文が激減してしまった。生産数は今までの10分の1以下になり、工房の閉鎖も考えるほどだった。 そんな中、よさこいで繋がった方々から応援の声をもらったことで、 「このまま鳴子作りを辞めるわけにはいかない。高知の鳴子を残していくことが自分たちの役目だ」という思いが強くなり、 クラウドファンディングに踏み切った。

クラウドファンディングの返礼品の一つ(笛鳴子)

公文さんは、このクラウドファンディングをきっかけに 鳴子作りという仕事との向き合い方が変わったという。クラウドファンディングを立ち上げるために、これまで仕事で関わったたくさんの関係者が力を貸してくれた。 また、クラウドファンディングをきっかけにやまもも工房を知った方が実際に工房まで来てくれたり、たくさんの応援メッセージをいただいた。苦しい状況の中、 人が人を繋ぎ、助け合いの輪が広がっていった。

あるときお客さまから、やまもも工房さんの鳴子は、僕の人生とずっと繋がっていますとのメッセージが届いた。写真をプリントできる ”フォト鳴子”という鳴子を彼女ができた時に作ったお客さまだった。鳴子を結婚式のウェルカムボードにも使ってくださり、子どもが生まれたときも記念品としてフォト鳴子を作りたいと注文をいただいた。今では子どもたちと一緒によさこいを踊っているという。
公文さんはこのメッセージで、人生に関わる仕事をしていたんだと気づかされたそうだ。

クラウドファンディングは立ち上げからわずか20日間ほどで目標を達成した。コロナ禍でよさこい祭りが中止されたにも関わらず、鳴子の注文をしてくれたよさこいチームもあった。当時支援してくださった方にお礼の電話をした時に、 「自分に返さなくていいから、次の人に返して欲しい。それが何よりの恩返し」と言われたことが心に残っているという。

コロナ禍を経験しなかったら自分の仕事がこんなにも多くの人と繋がっていたことにきっと気づかないままだったと思う。本当に大変だったが、大切なことに気づかせてくれた出来事だった。」と振り返った。

それぞれの想いが作り上げるよさこい祭り

よさこい祭りは踊り子さんとの距離が近いので、その部分も楽しんでもらえたら嬉しいと公文さんは語る。踊り子と観客が一体となって作り上げる熱狂の舞台、それがよさこい祭りだ。しかしその裏には、 長い歴史とそれを支える人々の情熱がある。そして踊り子とともによさこいを盛り上げ、素晴らしい音色を奏でる鳴子。この鳴子に込められた想いを想像しながら観ることで、一味違うよさこい祭りを感じることができるのではないだろうか。

やまもも工房では、色とりどりの鳴子だけでなく、普段使いできるアクセサリーなどの小物も製作している。気になった方は是非 やまもも工房公式サイトへ立ち寄ってみてほしい。

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