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高知の恵みをアイスに込めて「Made in 土佐」を届ける高知アイス

高知県と聞いて、まず思い浮かぶものの一つに「アイスクリン」があるだろう。
昔から親しまれてきたこの懐かしい味は、高知では移動販売という独自の形で根付き、今や「ソウルフード」として親しまれている。

今回は、そんな高知のアイス文化の魅力を全国に届ける、高知アイスの取締役兼営業統括部長、森下 伸広(もりした のぶひろ)さんに話を聞いた。

Contents

不屈の精神と「打たん太鼓は鳴らん」の教え

創業者の故・浜町文也(はままち ふみや)さんは、15歳から20歳まで黒潮町(旧佐賀町)で一本釣りの漁師をしていた。
1980年の結婚を機にサラリーマンへ転身。8年間の会社勤めの中でアイスクリン事業の立ち上げに携わり、事業部長を任されることとなった。
「来年もまた売りに来てね」という、催事場で出会うお客様からの温かい言葉は、彼の原動力となった。

しかし、3年が経っても新事業の経営は厳しく、部門の廃止が決まった。
それでも浜町さんの心には、お客様と交わした約束が残っていた。会社を辞めてアイス事業の権利を譲り受け、1988年8月に「土佐かしまや」を創業。当時、浜町さんはまだ28歳だった。

非常に責任感が強く、高知のすべてが大好きで、高知のために何かしたいという熱い思いが当時からあったという。人を惹きつける魅力に溢れていた浜町さんの行動力を支えていたのは、母から贈られた「打たん太鼓は鳴らん」という言葉だった。

何でもやらんと分からん。打たん太鼓は鳴らんろ。太鼓は打ってみなどんな音がするか分からん
やってみなければ結果は分からない。この教えが彼の座右の銘となり、生涯の原動力となった。

その後、1995年に南国市稲生へ自社工場を建設する際、社名を「高知アイス」へ変更。「高知のアイス屋さん」というストレートな響きだけでなく、「人、食、歴史、風土を含め、高知を愛するすべてのものが好き」という強い想いが込められている。

運命の出会いと「Made in 土佐」

独立して一番苦労したことは、「商品コンセプトの設定」だった。
かつての百貨店での業務では対面でお客様と関わるので、お客様と顔見知りになれるが、当時、高知アイスは他県に行けば全く無名だったという。

そのため、浜町さんが商品の背景がはっきり伝わるようなフレーズやコンセプトがないかと、悩んでいた頃、出会ったのが、梅原デザイン事務所の梅原 真(うめばら まこと)さんだった。
熟考する浜町さんに梅原さんはこう言った。
あなたのやってきたことは間違いない。あなたのやってきたことは『Made in 土佐』や

その瞬間、浜町さんは雷に打たれたような衝撃と、深い感動を覚えたという。
創業から15年。会社の将来に悩んでいた浜町さんにとって、梅原さんとの出会いは大きな転機となった。方向性や価値観を共有できたことが、その後の歩みを後押しすることになった。

後日、デザインが完成し、最初はアイスクリン、柚子や文旦、ポンカンなど4種類ほどのカップアイスとホームパックからスタートした。そのデザインが、会社が飛躍できたきっかけとなった。
洗練されつつも温かみのあるデザインは瞬く間に話題となり、展示会でもお客様が「可愛いですね」と手に取ってくれるようになった。
そして、東京の主要スーパーやコンビニでの導入が決まり、売上は一気に拡大した。

また、「Made in 土佐」は商品づくりの指針にとどまらず、高知アイスが最も大切にする理念となっている。
そしてなにより、高知アイスの商品づくりに、生産者の存在は欠かせない。
柚子、文旦、ポンカン、山北みかん、栗、お塩など、ありとあらゆる高知県の美味しい特産品を、一次産業に携わる生産者から仕入れている。

生産者へ恩返しをしたい。そんな浜町さんの強い想いから、須崎市浦ノ内に搾汁工場「KOCHI-ICE LABO(こうちあいすらぼ)」が建設された。これは、浜町さんが生前最後に手がけた事業だったという。

この工場の誕生により、以前は難しかった「生産者の顔が見える商品づくり」が完全に確立された。
誰が作っているのかがはっきり分かる。それこそが他社との決定的な違いであり、私たちが選ばれ続ける理由です」と森下さんは語る。



「本物」だけが持つ、圧倒的な素材力

高知アイスが支持される最大の理由は『素材』にあると、森下さんは語る。高知アイスでは、素材自体の良さと一つ一つの商品作りに対するこだわりと熱意がある。

例えば、シャーベットに使用するのは、高知県産果実のストレート果汁。香料や着色料に頼らず、素材本来の味を生かしている。
ポンカンの場合、室戸の吉良川(きらがわ)のものを使用しているという。この吉良川の西山台地は南向きの斜面で、朝から晩まで太陽の光と潮風を受ける。その結果非常に甘くてフルーティーなポンカンが育つと教えてくれた。

丁寧に練り上げる「バッチ式フリーザー」

アイスの製造方法にこだわっている高知アイスでは、「バッチ式フリーザー」という機械を使用している。
大量生産を優先する一般的な工場では、パイプを通して液体を連続で凍結・充填する「連続式フリーザー」が使われる。

一方高知アイスでは、アイスの素の液体をバケツに取り、フリーザーに移し込む。
約40リットル容量のバッチ式フリーザーを使い、一回ずつ丁寧に凍結することで、きめ細かく滑らかな食感に仕上げている。

また、高知アイスではコラボレーション商品の製造も行っている。
一番反響が大きかったのは『竜とそばかすの姫』とのコラボレーションだ。
劇中の景色が仁淀川流域であることなど、コンセプトが非常にマッチした結果となった。
公開からしばらく経つが、今でも名越屋(なごや)沈下橋に聖地巡礼で訪れる人は多い。

タイトなスケジュールでの開発など苦労も多かったが、地域社会と手を携えて成功させた経験は大きな財産になったという。

お客様の声は宝庫

お客様の声は、すべて宝の山です」と森下さんは語る。
なかでも、あるお客様から寄せられた言葉が、今も強く印象に残っているという。

ある日、人気商品「天日塩ジェラート」を購入したお客様から、一通の手紙が届いた。
そこには、「商品に不備があった。大ファンだっただけに、本当にがっかりした」という厳しい言葉がつづられていた。
手紙を読んだ森下さんは、営業上の損得ではなく、「一人の人間として、どうしても直接お詫びをしたい」と考え、
すぐにお客様のもとへ向かうことを決めた。

しかし、その日は激しい大雨に見舞われ、目的地へ向かう交通機関は運休。
再開の見通しも立たず、途中で足止めされてしまった。
そこで森下さんはお客様に電話をかけ、「高知から直接お詫びに伺ったのですが、大雨のため近くで足止めされています」と事情を伝えた。
するとお客様は、「そんな大雨のなか、わざわざ高知から来てくれたのか」と、驚きながらもその行動に感動されていたという。

後日、そのお客様から再び電話や手紙が届いた。
「これほど誠意を持って対応してくれる高知アイスの商品を、今度は私が周りの人に広めます」と言ってくださり、以前にも増して熱心なファンになってくれたそうだ。
この経験を通じて森下さんは、お客様一人ひとりの声に耳を傾け、誠実に向き合うことの大切さを改めて学んだと話してくれた。

高知家のうまいもの大賞2026最優秀賞に輝いた『ぶんたんレモン』

高知アイスではドリンクの製造も行っている。その中でも「ぶんたんレモン」は代表的な商品の一つだ。

高知家のうまいもの大賞10周年を記念し開催された「高知家のうまいものフェスタ」では、大好評だったという。
そのおかげもあって、高知アイスの全商品(アイスやドリンク)の中で、ぶんたんレモンが栄えある第1位に輝いた。

高知県内ではメジャーな文旦ではあるが、県外での知名度は低いのが現状である。
「ドリンクという手軽な形を通して、文旦の魅力を全国へ広めたい」という想いが開発のきっかけだと森下さんは教えてくれた。
文旦単体のドリンクは沢山あるが、それだけでは、おもしろみがないため、様々な果物と掛け合わせ、試作を重ねたという。
その結果、国産のレモンとの相性が抜群で、文旦ならではのほろ苦さとレモンのすっきり感が完璧にマッチした商品が完成した。

また、キャッチコピーに引き続き、高知アイスの商品のパッケージデザインに関しても、デザイナーの梅原真さんが手がけている。
ぶんたんレモンは、発売の1年前からイメージを依頼していたという。
そして、ぶんたんレモンのパッケージには「爽やか」や「美味しい」などといった味の説明をするような文言はあえて記載していない。
その背景には、「美味しいかどうかは、飲んだお客様自身が感じて決めること」という梅原さんの美学があるからだ。
高知アイスを代表する『おいしいんだものシリーズ』の名前の由来は、味のことではなく、『くだもの』にかけており、高品質な素材を使用しているというコンセプトだという。

この商品は高知アイス本社近くにある、『高知アイス売店 仁淀川カフェ』でも販売しているため、近くへ来た際にはぜひ立ち寄ってみてほしい。

「Made in 土佐」が描く未来のビジョン

高知アイスは、地元の農家を中心に、こだわりの素材を仕入れている。
高知アイスの商品がもっと発展することで、現在厳しい状況に置かれている一次産業に携わる方々のお役に立つことができるのではないかと思います。『Made in土佐』を訴える限りは、美味しい素材を分けていただきながら、これからも誠実な商品作りを続けていきます。
森下さんの言葉には、未来への強い願いが込められている。高知アイスだけでなく、そこに携わる事業者も含め、みんなで発展していけるよう、より一層邁進していきたいという。

高知の豊かな自然が育んだ素材に感謝し、その価値を最大限に引き出す。そして、地域の人々との強い絆を大切にする。そんな高知アイスのこだわりが詰まった商品をぜひ一度チェックしてみてほしい。
きっと高知アイスの商品、そして高知への愛情を深く感じることができるだろう。

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