高知県は、国内のゆず生産量の半分以上を占める日本一のゆず生産地だ。
ゆずは、その香りや酸味を楽しむ“香酸柑橘(こうさんかんきつ)”の一種で、古くから様々な料理に用いられている。高知県では、生のゆず果実から絞ったゆず果汁を“柚子酢(ゆのす)”と呼び、調味料として欠かせない存在だ。
ゆずにはビタミンCとクエン酸が豊富に含まれており、風邪予防や疲労回復、美肌効果が期待でき、最近ではゆずの種子のもつ美容成分に着目した商品も販売されている。また、ゆずには特有の香り成分“ユズノン”をはじめ、豊富な香り成分が含まれており、アロマとしても人気で、“捨てる部分がない”と言われるほど幅広い用途で親しまれている。
今回は、高知県で古くからゆず栽培に取り組み、県内2番目の生産量を誇る北川村で、北川村ならではの商品を作っている「北川村ゆず王国株式会社」の加藤 聡(かとう さとし)さんと、輸出事業部の石川 和孝(いしかわ かずたか)さんに話を聞いた。
高知県東部に位置する北川村は、年間を通じて温暖多雨で、昼夜の気温差が大きい。そのため、乾燥に弱く、寒暖差によって香り高く成長するゆずの栽培に適している。
また、坂本龍馬と共に薩長同盟を成立させた幕末の志士、“中岡慎太郎の生誕地”としても知られている。実はこの中岡慎太郎こそが、村民にゆず栽培を奨励した人物だ。
中岡慎太郎は庄屋見習いだった時、北川村に自生のゆずが多く実っていることに着目した。そして、塩を十分に買うことができなかった時代に、ゆずを塩代わりに防腐や調味料として使おうと考え、日陰で育つゆずを家の裏や山すそに植えることを奨励した。そのため、現在も北川村にはゆずの古木が多く存在するという。
現在では栽培面積が100ヘクタール以上になり、平成に入ってからは海外への輸出にも取り組み始めた。北川村では村民の多くがゆず栽培に関わっており、毎年11月になると村中がゆずの香りに満たされるそうだ。
北川村ゆず王国は、純粋はちみつブランド“株式会社サクラ印はちみつ”のグループ会社である。設立のきっかけは、1990年代に起きた“はちみつレモンブーム”だ。冬場のホット飲料として販売されていたはちみつレモンだが、さっぱりとした味わいで、夏場の清涼飲料としても人気が高かった。
このブームに可能性を感じたサクラ印はちみつは、「レモン以外の香酸柑橘類とのコラボ商品を開発しよう」と考えた。そんな中、加工しても風味が失われにくく、香りが豊かに保たれる北川村のゆずに出会う。この質の高いゆずで商品開発を進めるため、2006年に北川村ゆず王国を設立した。
北川村ゆず王国では、現在37名の従業員が収穫、加工作業、販売などを行っている。ゆずは冬のイメージが強いため、11月から年末にかけてが繁忙期となるが、ゆず果汁等を活かした加工品は、1年を通して製造している。
2019年に高知に赴任した加藤さん。最も大変だった時期は異動して直ぐに始まったコロナ禍だったという。飲食店の営業時間短縮や酒類提供の制限などにより、料理やドリンクに使われる業務用のゆず果汁の需要が激減してしまった。
北川村では、フランスなど海外への輸出再開・販売拡大に取り組んだことで、なんとか持ちこたえることができた。
コロナ禍が明けてからは、国内のゆずの需要も回復してきたが、今度は天候不順などの影響でゆずが不作となり、商品を作りたくてもゆずがない状況になってしまった。
数々の難局を乗り越えながら、北川村のゆずは国内外でその知名度を高めつつある。
思いを語る加藤さん
北川村ゆず王国が製造している商品は100種類以上にのぼる。
特に人気が高いのは、はちみつの甘さとゆずの爽やかな風味を楽しめる“つぶつぶゆず” だ。もともと家庭用のゆず茶として開発された商品だが、飲食店でもゆずサワーなどのゆずを使用したメニューで幅広く利用されている。
こういったはちみつを使用した商品は、サクラ印はちみつとのコラボ商品として誕生した。グループ会社の協力も得ながら、多彩な商品が製造されている。
北川村ゆず王国は、委託を受けて他社ブランドの製品を製造するOEMも多く請け負っている。様々な企業から「北川村のゆずを使った商品作りを考えているのでぜひ作ってほしい」と依頼を受けるという。企業からの依頼内容に寄り添いながら、ゆずの配合量や味を相談しつつ、北川村の工場で試作を重ねている。
ゆずそのものが高品質というだけでなく、北川村ゆず王国の真摯な姿勢が、他社からの信頼を築くことに繋がっているのだろう。
また、北川村ゆず王国は、多くのイベントで自社商品を使用した料理の提供を行っている。中でもお客さまから好評なのが“ゆずぽん酢で作る焼きそば”で、意外な組み合わせに驚かれることも多い。炒めることでゆずの酸味を飛ばしつつ、さっぱりとした味わいに仕上がる。“焼きそばのソースをゆずぽん酢に変えるだけ”という手軽に挑戦できる料理なので、ご家庭でも是非お試しいただきたい。
北川村ゆず王国が商品作りで重要視していることは、ゆず本来の香りと安全性だ。北川村のゆずは、他の産地と比べても特に香り高いとお客様から評価をいただいている。その要因のひとつとして、北川村で育てられているゆずの木には、“実生(みしょう)ゆず”の割合が高いことが挙げられている。
ゆずの木は成長が遅く、育てるのが難しい。そのため、現在では他の木に接ぎ木をして育てられるのが一般的だ。
それに対して実生ゆずとは、接ぎ木をせずに、種からそのまま育ったゆずの木を指す。接ぎ木のゆずに比べてゆずの香りが強く、豊かな風味を持つことが特長だ。
北川村は、昔から自生のゆずが多く存在しており、江戸時代の終わりからゆずの栽培に力を入れてきた。そのため、実生ゆずが今でも多く残っているという。
他の産地に比べて北川村のゆずには、実生ゆずの木からとれたゆずが多く含まれていることから、香りの良さが高く評価されているのだろう。
この香り高い北川村のゆずを、消費者に届けるためには、安心安全なものづくりが欠かせない。どれだけ素材にこだわっていても、衛生管理が行き届いた場所でなければ安全な商品を作ることはできない。北川村ゆず王国では、食品安全に係る外部認証を取得・遵守することで、信頼性を確保している。
また、加熱処理についても細やかな配慮を行っている。過剰な加熱はゆずの香りを損なう可能性があるため、北川村のゆずの特長である豊かな香りを保ちながら、安全な商品を作りあげるバランスがとても難しい工程だ。
北川村ゆず王国では、産地密着型の商品を生み出すことにもこだわっている。北川村に工場を構えているため、素材の調達から最終加工まで一貫して行うことができる。このことが素材のポテンシャルを最大限に活かした商品作りに繋がっているのだ。
「とても美味しくて、この商品しか食べられない」といった声が寄せられることもあるという。地元に根付いたストーリー性のある商品が支持されて、北川村ゆず王国の商品を広めたいと応援してくれるお客さまが増えている。
フランスをはじめ、海外ではゆずの人気が高まっている。果汁の酸味や果皮の香りを楽しむ香酸柑橘の中でも、他にはない特有の香りをもつゆずが高く評価されている。
北川村ゆず王国は2011年にフランスで開催されたゆずの試食会をきっかけに、品質の高いゆずを海外へ広めるため、輸出にも力を入れるようになった。10年以上にわたり安定した輸出事業を展開しており、その実績から信頼できるゆず生産地と認められている。
ゆず果汁などの加工品を出荷している産地は他にもあるが、加工せず生の果実 “ゆずたま”(未加工の生の果実) を欧州向けに出荷しているのは高知県でも北川村だけだという。
フレンチシェフからの注目度も高く、料理のソースやドレッシング、シャーベットなどに使われており、北川村産のゆずは高い人気を誇っている。
海外輸出において課題となるのが賞味期限だ。海外への輸送は船便が使われることが多く、陳列されるまでに2、3ヶ月を超える場合もある。
こうした課題を踏まえて、賞味期限が1年以上になるよう、ゆず加工商品の開発・改良を積極的に進めている。
輸出事業部の石川さんは、「ゆずの加工品をさらに充実させて、日本以外の多くの方にも、北川村のゆずの魅力を届けることが目標です」と教えてくれた。
また、ぽん酢などの日本の食文化を海外で広めていくには、日本ならではの価値を発信する必要がある。広く海外でも知られるようになってきたぽん酢というワードだが、その使い方を尋ねられることはまだ多いという。
「日本で作り、日本人の感覚で提案して、その魅力が受け入れられたときに、初めて本当の意味で会社としても役割を満たせるのではないかと思っています」と石川さんは語った。
北川村のゆずを日本全国および世界に広めるべく、商品販売や製造における基盤を強化していく中で課題となっているのが、人手不足と高齢化だ。
こうした問題に備えるには、ある程度の機械化が必要になるという。機械を導入するスペースの確保など、機械化を視野に入れた取り組みを検討しているそうだ。
北川村では、ゆずを活用した村起こしの取り組みが盛んなため、新規就農者が徐々に増えてきている。北川村が誇るゆず農地を維持していけるように、村全体を挙げて就農者の支援に取り組んでいるそうだ。
「人口が減ってきて厳しい状況ではありますが、北川村に根を張りながら、美味しくて安全な商品を作っていきたい」と加藤さんは語る。
北川村ゆず王国の商品は、スーパーや土産物店に加え、オンラインショップからも購入することができる。
世界に認められた北川村のゆずの品質の高さを、ぜひ手に取って体感してほしい。その香りや風味は心を癒し、日々の暮らしに彩りを添えてくれるだろう。
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