高知まるごとネット

事業者ログイン

四万十のすじ青のりを未来へ

淡水と海水が混ざり合う汽水域で育つ「四万十川の天然青のり」は、他の地域と比べても鮮やかな色合いと柔らかさ、そして鼻を抜ける芳醇な香りと深い旨味が特徴の逸品だ。

今回は、四万十市で海藻乾物の加工販売を営む、有限会社加用物産の専務取締役 兼 陸上養殖事業責任者、加用祐都(かよう ゆうと)さんに話を伺った。

Contents

加用物産の歴史と、陸上養殖への決意

1907年に青のりの販売から創業した加用物産。先代たちは青のりの出荷組合の設立や青さのりの養殖事業立ち上げに携わり、長年にわたり四万十の海藻産業を支えてきた。

かつては国内シェア90%以上を誇っていた四万十川のすじ青のり。これを、関西を中心に海運で流通させ、青のりを全国に広めることを代々続けてきた老舗企業である。

現在は、四万十青のりを使用した自社商品を展開しており、『マルカのふりかけのり』や『四万十青のり入り つまみのり』などは、今や多くの人に愛されている。一方、四万十川の天然青のりは近年、深刻な不漁が続き、2021年には収穫量がゼロとなる危機にも見舞われた。

天然青のりの不漁が続く中、転機をもたらしたのは3代目のころから続く高知大学とのつながりだった。
同大学が開発した青のりの陸上養殖技術が初めて事業に用いられた際にも販売面で協力してきた。その技術を用いたベンチャー企業が隣市で起業したことで、四万十でも生産への道が開かれたのだ。

本来、加用物産の本業は加工・販売であり、生産は川漁師の領分だった。生産者の仕事に踏み込む引け目から、まずは川漁師や養殖事業者に呼びかけたものの担い手は現れなかった。
それでも、四万十の海藻事業を牽引してきた自負から、「陸上養殖という新たな形でもう一度自分たちで立ち上がろう」と決意。2024年11月、四万十川のほとりで陸上養殖事業をスタートさせた。

「高知大学や四万十市との連携を通じて生産技術を磨き、さまざまな海藻の可能性も探っていきたいと考えています。歴史ある四万十の海藻産業を未来に残していくためにも、環境の変化に対応できる陸上養殖への産業転換は今後も必要不可欠だと感じています。」と加用さんは力強く語る。

加用さんが最も苦労したと振り返るのが、陸上養殖施設の立ち上げだ。限られたリソースの中、先頭に立って生産試験に着手。測量会社での勤務経験を活かし、現地調査から測量設計、水槽の基礎施工に至るまで自らの手で担い、養殖を始められる環境を整えていった。
なかでも要となった地下海水の確保では、地道な調査で候補地を探し出し、良質な地下海水を掘り当てることに成功した。

全国にファンを有する看板商品

四万十の海藻は知名度が高く、高知県フェアなどでも人気を集めている。加用物産は四万十青のりをはじめ多彩な海藻商品を県内外へ届けており、その看板商品が『つまみのり』だ。

国内産の焼きバラ海苔を主原料に四万十の海藻をブレンドし、2017年から販売されている。原材料は海藻のみで味付けはしておらず、軽やかな食感の中に海苔本来のうまみと四万十の海藻の香りが広がる。軽くて持ち運びやすい点も選ばれる理由の一つだ。

ラインナップは2種類で、ブレンドする海藻が異なる。『国内産青さのり入り つまみのり』は、もともと四万十産青さのりを使っていた商品。近年の不漁を受けて、出荷量を維持しながら全国のスーパーなどで販売されている。

一方、『四万十青のり入り つまみのり』は、陸上養殖で生産した四万十青のりを使ってリニューアル。四万十の名を冠して販売できるようになり、土産物店やセレクトショップなどへ販路を広げている。

年間出荷数は両商品合わせて約40万パックに上る。四万十産青のりは『マルカのふりかけのり』などの加工品にも活用している。同商品は販売開始から人気で、出荷が間に合わない時期もあるため、お客様をお待たせしないよう増産体制を計画しているという。

長年愛される商品づくり

加用さんがこれまでで最も印象に残っているお客様の声は、『つまみのり』を食べた方から寄せられた「直接伝えたかったから電話した、本当においしかったよ」という言葉だ。

「やっぱり加用物産さんのものは一味違うね」と声を掛けられる瞬間が、何よりの喜びだという。自社の商品を覚えて再び選んでもらえる実感が、家業を途絶えさせてはならないという想いへとつながっている。

加用物産の商品が長年愛され続ける理由の一つは、どこまでもお客様のニーズに寄り添っている点にある。
ヒット商品の『つまみのり』も、お客様の要望をきっかけに生まれた商品だ。こうした商品開発を支える一人が、加用さんの父である加用高常さんだ。かつて名だたる中華料理店で責任ある立場を任され、腕を振るった料理人で、その経験を生かして味づくりや製造方法の工夫に取り組んでいる。

「メーカー廃業により大事な商品が手に入らなくなり困っている。似た味の商品を作ってほしいなど、製造の相談は後を絶たない。高常さんは、求められる味を確かめ、原材料を見ると大体の作り方が分かるという。そのため、完成までにほとんど時間を要さず仕上げてきたとのこと。

加工と仕入れへのこだわり——品質と見栄え

海藻乾物の加工で欠かせないのが、異物の選別だ。
効率よく取り除くために機械選別も行われるが、現在の技術では完全な除去が難しい。そのため加用物産では、最終確認をすべて従業員の目と手で行い、品質を維持している。

一般的には粉状で流通する青のりだが、同社では粉にする前の「原藻」でも販売する。かつて四万十川の天然青のりはロープに掛けてまっすぐ伸ばし天日干しされており、袋に入れた際の見栄えも優れていた。乾燥機を用いる陸上養殖でもその姿を再現するため、乾燥容器へ並べる際に丁寧に整える作業が欠かせない。

選別を経た原料は手詰めの工程へ回る。『つまみのり』などの袋商品は、海苔を崩さぬよう力加減に注意しながら均一なボリュームが出るよう手作業で詰められる。機械ではこれだけの量を詰めるのは難しく、しっかり詰まった袋は店頭での見栄えもよい。繁忙期にはこの手作業が一層の忙しさをもたらすと加用さんは語る。

丁寧な加工を支えるのが、仕入れ段階での原料の見極めだ。 海藻の状態やお客様の用途に合わせて原料を選ぶことが、商品の仕上がりにつながっている。
加用さんによれば、品質を判断するうえで最も重要なのは海苔の色であり、黄緑色ではなくツヤのある深い緑色が良質な証拠とのこと。

原料の見極めから選別、手詰めに至る一連の手仕事を経て、こだわりの商品が完成する。中身が見える透明なパッケージには、海藻の色や形、大きさなどを確かめて選んでほしいという想いが込められている。

強固なネットワークと四万十素材への誇り

加用物産の強みの一つは、海藻業界と築いてきた信頼関係にある。
高度な技術やノウハウを持つ専門パートナーと長年知恵を絞り、互いに品質を高め合ってきたからこそ、妥協のない商品を手に取りやすい価格で全国へ届けられている。地元素材へのこだわりも同社の特長だ。
佃煮やドレッシングなど、扱う商品の大半に高知県産の素材を採用しており、四万十産青のりパウダーを塩とブレンドした『青のり塩』も、揚げ物などに重宝され土産物店で根強い人気を誇る。

一方で、地元素材から切り替えている海藻もある。かつて、黒潮町から土佐清水市にかけての海岸で採れていた『ふのり』は、磯焼けで激減したため、現在は国内産地から仕入れている。原料高という課題に直面しながらも、みそ汁の具材として親しまれてきた海藻を、「それでも欲しい」という声に応えて届け続けている。
『土佐ののり佃煮』など土地とのつながりを伝える商品づくりを大切にしながら、今後も全国の原材料ネットワークを維持しつつ四万十での海藻生産と利用を広げ、地域ブランドと海藻産業を支えていく考えだ。

四万十を「一大産地」にする未来図

陸上養殖を始めた初年度の青のり生産量は、乾燥重量で約2トン。「四万十産の青のりが欲しい」という思いに対し、着実に応えられる体制が整いつつある。

しかし、加用さんの見据える未来はもっと大きい。
「これくらいの量ではまだ『地域産業』として十分に根付いているとは言えません。今後はもっと多くの地域関係者を巻き込み、『四万十といえば海藻陸上養殖の一大産地だ』と全国から言われるような未来を、地域と一緒に作っていきたいんです。」

その基盤となるのが、高知大学や四万十市など産学官金と連携する「しまんと海藻エコイノベーション共創拠点」、通称「しまのば」だ。海藻の生産技術や活用の可能性を探り、研究の成果を地域の産業につなげる取り組みが進められている。海藻を単なる「食品」にとどめず、海藻に含まれる成分を薬や健康食品、化粧品などに応用する研究もされており、産業としての大きな広がりが期待されている。高知大学の知見と地域の力を合わせ、大きなビジョンに向かって突き進んでいる。

直面する課題とこれからの挑戦

四万十川の天然青のりは、最盛期の1980年頃には年間約50トンの乾物収穫量があった。
しかし、不漁によって供給が減少する中、他県産の青のりや、青のりと同じ用途で使われる別種の海藻「アナアオサ(青さ粉)」などが流通し、市場の状況も変化してきた。


加用物産が目指すのは、既存の市場でシェアを奪い合うのではなく、各地の産地や事業者と共存しながら、海藻の需要そのものを広げていくことだ。陸上養殖で生産量を伸ばすとともに新たな活用を考案し、生まれた需要を海藻産業全体の成長につなげたい考えだ。

その一つが、地元での消費を広げる取り組みだ。かつて四万十川で採れた青のりは主に関西へ出荷され、地元には青のりを使った料理がまだ少ない。料理一品に使う量も限られるため、飲食店や食品事業者と連携し、さまざまな料理や加工品への活用を提案することで、青のりを楽しむ機会を増やしていきたい考えだ。
さらに、青のり以外の海藻の生産にも挑戦していく。高知県で天ぷらの具として親しまれている青さのりなど、生産できる海藻の種類を増やし、地域の食文化と結び付けながら、四万十に海藻産業を根付かせていくことを目指している。

高知大学と共に灯す再興への想い

「多くの方々に支えていただき、ここまで歩んでくることができました。今では高知大学をはじめ、大勢の人がこの取り組みに加わり、四万十の地域産業を盛り上げようと力を合わせています。かつて全国に知られた四万十の青のりを、『陸上養殖』という新しい形で再びお届けできるようになりました。地域の誇りである青のりが、四万十に新たな活気をもたらしています。ぜひ一度、私たちの青のりをお手に取ってみてください。」

人の手と目による徹底した品質へのこだわり。そこには、四万十の豊かな食文化を守り抜き、次世代へと受け継いでいこうとする熱い想いがある。
四万十の青のりを手に取れば、香りや味わいとともに、地域の産業を未来へつなぐ挑戦も感じられるだろう。

「川産物」登録商品

    その他の記事

    OTHER CONTENTS

    自社商品を販売するECサイトを保有する
    高知県内事業者が登録できる

    「高知まるごとネット」で
    販売力を高めよう!

    • 高知県内で生産・収穫・水揚げされた農畜産物
    • 主要な原材料が高知県内産の加工食品
    • その製造若しくは加工の最終段階を県内事業者が行っている加工食品
    • 高知県特有の文化や技術を活かした加工食品
    • 高知県内で生産・製造・加工された食品以外のもの

    一つでも該当する商品を取り扱っている高知県内事業者は今すぐ登録!