“ぽん酢”といえば、柑橘果汁やお酢と醤油をあわせた「ぽん酢しょうゆ」を思い浮かべるだろう。鍋料理には欠かせない、冬の定番調味料だ。
最近では鍋料理以外にも、サラダのドレッシングやアレンジメニューに活用したりと、その爽やかな酸味から用途が広がっている。
ゆずの一大生産地である高知県とぽん酢の関わりはとても深く、現在高知県で販売されているぽん酢はなんと60種類以上も存在する。
今回は、高知県のぽん酢を全国に広めるべく、“とさのぽん酢プロジェクト”を立ち上げた「株式会社とさのさと」の竹中 義博(たけなか よしひろ)さんと横山 眞二(よこやま しんじ)さんに、話を伺った。
温暖で日照時間が長い高知県では、ゆずをはじめとする20種類以上の“香酸柑橘(こうさんかんきつ)”が栽培されている。この香酸柑橘全般を、高知県では“酢みかん”と呼び、古くから家庭でも活用されてきた。酢みかんの果汁を醤油と混ぜて調味料にするという、いわゆる“ぽん酢”としての使い方も一般的で、全国的にぽん酢が普及するよりずっと前から身近な存在であった。
酢みかんをベースに作られた高知のぽん酢は果汁を多く使用しており、爽やかな香りと柔らかな酸味が特長だ。高知県の特産品として有名な“カツオのたたき”も、ぽん酢にどっぷりつけるのが昔ながらの食べ方である。
この酢みかんと醤油を混ぜあわせた調味料“ぽん酢(ぽん酢しょうゆ)”を、高知県で最初に商品化して量販したのは、“ゆずの村”として知られている馬路村だそうだ。その後、県内の柑橘農家や地元老舗料理店、醤油・出汁メーカーなどが商品開発に乗りだした。今では、柑橘の酸味がよく効いたものや出汁が効いたものなど、それぞれの得意分野を活かした商品が多数発売されている。
ぽん酢の消費量が多い関西地方では、ふぐ料理や湯豆腐など、その地域の料理を引き立たせることを目的としたぽん酢が開発されてきた。一方で、酢みかん文化から始まった高知のぽん酢は、原料に使う素材を活かすことを目的に開発されてきた歴史がある。そのため高知県のぽん酢は、それぞれの味の違いを堪能できるほど種類が多く、ぽん酢を選ぶ楽しさがあるのだ。
JA高知県の子会社「株式会社とさのさと」が運営する“とさのさと アグリコレット(AGRI COLLETTO)”は、2019年9月にオープンした複合型商業施設だ。「高知の“うまい”を再発見!」をコンセプトに、高知の魅力を再発掘しながら、贈答用にも家庭用にもぴったりな選りすぐりの商品を提案している。
アグリコレットは設立当初から、ぽん酢を中心とした戦略を掲げ、高知の魅力を発信する取り組みを続けてきた。そのベースにあるのは、高知県の酢みかんの食文化を広めることだ。
高知県の柑橘としてよく知られるゆずだけでなく、直七(なおしち)やぶしゅかん、文旦(ぶんたん)など、県外に知られていない香酸柑橘にも着目し、改めて高知県を“酢みかんの県”としてアピールしたいという思いがあった。
また、ぽん酢の需要拡大によって、ぽん酢にあう高知の肉や魚、農産物といった食材の売り上げも拡大し、高知県の食品産業全体が共に成長していくことができると考えたのだ。
アグリコレットでは、まずは高知県内でぽん酢を盛り上げるための仕掛けとして、夏の真っ盛りに“とさのぽん酢まつり”を開催した。「ぽん酢は冬の調味料」というイメージを一新する必要があると感じたためだ。
酢みかんの酸味が効いたぽん酢は、夏バテしがちな高知の暑い夏ととても相性が良い。サラダのドレッシングやパスタソースとしてなど、ぽん酢のさっぱりとした風味を活かした新たな活用方法を提案した。とさのぽん酢まつりでの仕掛けは大成功をおさめ、今では夏も冬と同じくらいにぽん酢が購入されるようになったという。
とさのぽん酢まつりの成功をうけて、ぽん酢の影響力に手応えを感じた竹中さんは、高知県農商工連携協議会に“とさのぽん酢プロジェクト”の立ち上げを提案した。2024年9月に発足し、同年10月の「ぽん酢王国・土佐」宣言会議で、県内外でのぽん酢消費拡大に向けた取り組みを発表した。
とさのぽん酢プロジェクトでは、県内のぽん酢製造業者と農商工業団体、県が連携して、“とさのぽん酢”を盛り上げる様々な取り組みを行うことで、酢みかん文化の再興や高知県のぽん酢の更なる認知度向上、消費・製造拡大等を目指している。
ぽん酢を紹介する竹中さん
「色々な種類を楽しみながら選んで、幅広い料理に使ってもらえるようになれば、ぽん酢の可能性も広がります。」と横山さん。
竹中さんは「今こそ、ぽん酢の選択肢を広げることで、お客さまの購買意欲を高め、購入数も増えていくと思うんです。仕入れ担当者の方にもそうお伝えしています。」と語った。
実際にアグリコレットでは、取り扱っているぽん酢の種類が多いことで、選択できる楽しさが増え、隠れたヒット商品が出始めたという。
そして、2025年12月、高知県発祥の優れた製品や産業振興活動に贈られる“第40回高知県地場産業大賞”にとさのぽん酢プロジェクトが選出された。構想から約7年にわたる歩みを経て、高知のぽん酢文化が大きく注目を浴びたのだ。
お客さまにとさのぽん酢を購入してもらう取り組みとして、大きな役割を担っているのが とさのぽん酢テイストマップ“COLLETTO TOSA NO PONZU TASTE MAP”だ。アグリコレットのオープン時から店内に飾られている土佐酒テイストマップを参考に制作された。
土佐酒テイストマップは、もともと「お酒を飲めない人が贈答用に選ぶ際の参考にしたり、お酒にあまり関心のなかった人が興味を持つきっかけになるようなマップを作りたい」という思いから制作したものだ。
アグリコレットを訪れる多くのお客さまに、土佐酒を購入する際の判断基準として活用されており、テイストマップの前で記念撮影をしたり、SNSでシェアしたりする姿もあった。
老若男女問わず、土佐酒テイストマップが活用されている様子から、土佐酒と同様に味の好みに幅のあるぽん酢のテイストマップも需要があると考えた。そこで、味覚センサーやにおい分析装置を使った“美味しさの数値化”を行う高知県工業技術センターの協力のもと、高知県で作られている60種類以上のぽん酢を網羅したとさのぽん酢テイストマップが完成した。
「日本中のお客様の冷蔵庫に貼って楽しんでもらえるようなマップにしたい」という思いから、それぞれの味や風味が伝わりやすく、選ぶ楽しさを感じられるマップとなっている。
高知のぽん酢を初めて購入する人は、まずはマップの中心に近いものから試す人が多いという。一方で、味の違いを楽しもうと、マップ上の対極にある商品を複数購入する、といったお客さまの姿も多くあった。
他にも使いたい料理をイメージしながら選んだり、あえて普段購入しているものとは違った方向性のぽん酢に挑戦するなど、テイストマップが新しい楽しみ方を広げるきっかけとなっている。
とさのぽん酢テイストマップは、アグリコレット店頭やぽん酢プロジェクトが行うイベントなどで入手できる。
ぜひとさのぽん酢テイストマップを見て、ぽん酢選びの参考にしてほしい。
お客さまにおすすめのぽん酢を提案するときには、まず食の好みを聞くことがポイントだという。「お客様の好みも聞かずに、絶対これがあうという決めつけはしません。決めつけてしまうと、楽しくないですから。」と横山さんは話す。
そんな横山さんに、一番印象に残っているぽん酢の使い方を聞いてみたところ、“旨塩ぽん酢”を使った焼酎の塩ぽん酢割り(塩ぽん酢サワー)を教えてくれた。ゆず、レモン、だいだい、かぼす、小夏などの国産柑橘果汁の爽やかな酸味と、室戸の海洋深層水塩と瀬戸の海水塩のまろやかな塩味が意外にも焼酎にマッチするという。お酒の国高知ならではの楽しみ方だ。
高知のぽん酢はお肉はもちろん、魚に野菜、お酒にもあう、まさに万能調味料である。
とさのぽん酢テイストマップを見ながら好みの味を追求するか、新しい味を求めて冒険してみるか、楽しみ方は無限大だ。
酢みかんから生まれた高知県のぽん酢は、現在も酢みかんを基本として製造されている。全国展開を図る際にも、酢みかんを全面に打ち出すことを考えた。高知県以外のお客さまにもその価値を知ってもらい、購入に繋げるためだ。
商品のこだわりは、見た目だけでは伝わりづらい。そのため、選び抜かれた食材をふんだんに使用していることなどの詳細な情報をPOPにまとめ、店頭にレイアウトしている。
また、とさのぽん酢プロジェクトの活動として全国に足を運んだうちの1つに、百貨店の日本橋三越本店がある。ここでも約50種類の試飲販売を行った。最初はぽん酢を試飲することに躊躇したり、1つあれば十分と言っていたお客さまもいたが、次々に試飲し、2本、3本と購入していったそうだ。
販売を行った期間内に複数回購入に来たり、1度に5本以上購入するお客さまもおり、一週間で約1000本を売上げた。
「ぽん酢のような瓶商品で、購入数を増やすのは難しいという声もあったけれど、売り方を工夫すれば、良いものは必ず売れます。その価値をいかにして知ってもらうかが大切です。対面で個々のぽん酢の特長、チャームポイントを説明すれば、高知のぽん酢が愛されている理由を分かってもらえるはずだと確信していました。」と横山さんは語った。
ぽん酢の魅力を語る横山さん
また海外ではゆずの人気にともなって、少しずつぽん酢の認知度も上がってきているそうだ。こうした動きから、ぽん酢とあう海外の食材が再発見できる可能性もある。
食の多様化が進み、十人十色の時代から、一人十色の時代に変わってきたからこそ、ぽん酢が活躍できる場がますます拡大している。高知の酢みかん文化の再興にむけて、日本全国、そして海外に向けて日々ぽん酢の情報発信を続けている。
竹中さんは、カツオのたたき、坂本龍馬、よさこい祭りと並ぶくらいにぽん酢を高知の名物にしたいという。「高知県に来たらぽん酢を買わないとね」と言ってもらえるようになることを目指している。
「ぜひ当店やテイストマップを掲示している店舗を訪れて、テイストマップを見て、知って、手に取って、買ってほしいです。そして皆さんの冷蔵庫のポン酢を、1本でも2本でも増やすことができたら嬉しいですね。」と横山さんは言った。全国各家庭の冷蔵庫に、ぽん酢を何種類も置いてもらえるよう、まずは高知県民の冷蔵庫に入っているぽん酢の種類を倍にすることが目標だ。
「お気に入りのマイぽん酢を、いっぱい見つけてぼったり(たくさん)使ってくださいね。」
こだわりたっぷりの高知県のぽん酢は、各事業者のECサイトや土産物店、スーパーなどでも購入することができる。高知県に訪れた際には、多種多様なぽん酢が集結する、とさのさとアグリコレットにも、ぜひ一度足を運んでみてほしい。きっと食卓がより一層豊かに彩られることだろう。
そして、ぜひお気に入りのぽん酢や美味しい食べ方を、お友達などにおすすめしていただきたい。
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