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香り広がる、高知のお米

高知県内の飲食店でお米を食べたときに、香ばしい香りを感じたら、それは高知の“香り米”かもしれない。ポップコーンやナッツのような香りともちもちした食感が特徴の、知る人ぞ知る逸品だ。

今回は、そんな香り米の販売を行う「高知食糧株式会社」の下元祥吾(しももとしょうご)さんと、生産者である嶋内宏昇(しまうちひろのり)さんに話を聞いた。


Contents

香り米誕生の背景

香り米といわれる品種のお米は、世界にいくつか存在する。
有名なのは、タイの“ジャスミンライス”だ。その形は日本のお米よりも細長く、ジャスミンの花のような香りで、日本でもタイ料理などに使われている。

日本の香り米は、ほとんどが普通のお米と同じように短く丸みを帯びた楕円形で、羽釜で炊いたような香ばしい香りが特徴的だ。
古代米の一種で、黒米や赤米とともに、祭礼での神物などに用いられていたとされている。高知県には、室町時代に応仁の乱を逃れて土佐に下った一条教房が持ち込んだといわれている。

国内では高知県が日本一の生産量を誇っており、山深く、澄んだ水の豊富な山間部で栽培されている。高知県で生産されている品種は、“さわかおり”、“ヒエリ”、“汢ノ川(ぬたのかわ)1号”、“十和(とおわ)” などがある。そして最も多く栽培されているのが通称 “十和錦(とおわにしき)”という香り米だ。

十和錦は、昭和30年代に四万十川流域の旧十和村で偶然発見された。
当初は、“変わった香りのするお米”として家庭用に栽培され、周辺地域で楽しまれていた。身近な存在だったため、系統や親品種を特定して記録を残したり、データを分析する必要性が特に感じられることはなかった。
その後、次第に他の地域でもその存在が知られるようになり、販売用としての栽培が始まった。ルーツを正確に辿ることは難しいが、発見当時の状況などから“黄金錦(こがねにしき)”と在来種の“ヒエリ”が自然交配して誕生したと考えられている。

こうした誕生の経緯から、十和錦は正式な銘柄として登録されていない。
偶然の発見から始まり、地域内で自然に広がりながら親しまれている、隠れた名産品なのだ。

四万十の地で育てる

四万十地域出身の嶋内さんが本格的に農業に携わり始めた頃には、まだ香り米の生産量は多くなかった。
香り米の生産を広げたのは、高知食糧との取り組みを始めてからだという。20年ほど前から、県内外への香り米販売の推進が始まり、少しずつ出荷用に生産する量が増え、生産面積を増やしていった。

嶋内さんが香り米を栽培している面積は、“ヒノヒカリ”“にこまる”などの普通のお米に対して4分の1ほどで、収穫量は年間500キロ程度だそうだ。
稲作は嶋内さん一人で主な作業を行う。忙しい収穫時期のみ人を雇ったり、友人に手伝ってもらうこともあるそうだ。

取材時は、収穫後の荒起こし(次の田植えに向けて土を大きく耕す作業)の時期で、冬の間に土造りの作業を行っていた。鉄、けい酸、カルシウムなど、米作りに欠かせない栄養を補給する作業だ。

田植えは、品種によって時期をずらしている。香り米の田植えが一番早く、5月の連休頃から始まる。その後、ヒノヒカリ、にこまると続く。
香り米は収穫も早く、9月上旬頃から始まり、穂が少し青いくらいで収穫している。
香り米の一番の特長は、やはりその香りの部分にある。香り米は熟れすぎると香りが弱くなってしまうため、早めに刈る必要があるという。
収穫された籾(もみ)は乾燥させ、貯蔵庫で保管する。籾の乾燥は、急激な温度変化でお米が割れてしまわないように、遠赤外線で温度を調節しながら時間をかけて行っている。

高品質のカギは熟練の技と寒暖差

香り米は他品種に比べて背が高く、稲穂も長い。1メートル超まで成長するため強い風や雨の影響を受けやすく、通常の米栽培よりも肥料や育て方に工夫が必要となる。
収穫する際も長いため刈りにくく、機械への負担が大きい。他のお米なら駆け足で刈り取るところを、香り米は歩くような速さでゆっくり刈り取るそうだ。
また、他品種に比べて穂が実りにくい特性があるため、収穫量も少なくなる。そして収穫後は種を厳選して残し、春になると苗を出す工程から作業を始める。

さらに、香り米は2年に1度植える田んぼや栽培に利用する種を変えている。同じ土地で収穫した稲から取った種をそのまま使い続けて栽培すると、香りが弱くなってしまうためだ。
このように、香り米の生産には他の品種の何倍も手間がかかる。興味を持って香り米の栽培を新たに始めたが、稲が倒れたり香りが出なかったりと、苦戦した例も多いという。

左:嶋内さん 右:下元さん

高知県の香り米の産地は、四万十町(旧窪川町)の仁井田地区と、さらに西へ行った大正地区が最も多い。香り米は高知県の西側で多く生産されている。
四万十川の上流の気候が、最も適しているのだろう。寒暖差がある方が良いとされている農作物は多いが、香り米にとっても寒暖差が重要であり、さらに冷たい水で育つことで香りが強くなる。
高知県の北の山間部である嶺北地域でも”さわかおり”という香り米が作られているが、やはり山間地の冷たい湧き水が利用されている。

寒暖差や冷たい清流といった高知の豊かな自然環境が揃っているからこそ、品質の良い香り米が育つ。そして、その絶妙な条件が整った土地で、手間暇を惜しまず栽培に取り組む生産者がいるからこそ、高品質な香り米を楽しむことができる。

上手な人に聞くときもあるけど、基本的なことしか教わることはできないので、自分の経験で、やりながら調整してベストな状態にしていくしかない。」と嶋内さん。
下元さんは、「熟練の技ですね。香り米を作るのが上手な人っていますから。倒れないようにしつつ、香りも保つように。経験豊富なプロの方にお願いしています。」と話す。
熟練した生産者が積み上げてきた技を駆使し、手間暇かけて生み出す、特別な香りなのだ。

夏の四万十川上流と秋の嶺北地区

香りを極める楽しみ方

香り米は、普通のお米に少量混ぜ込んで炊くことで、羽釜で炊いたような香ばしい香りが全体に広がるのが特長だ。いつものお米に10%〜30%ほどブレンドし、お米の量に合わせた通常通りの水加減で炊きあげる。
香り米を炊くと、湯気とともに香りが広がってくる。冷えた後も香りが失われず、炊きたてのような香りを楽しむことができ、和食に限らずどんな料理にも合わせられる。高知県内の飲食店では、焼肉や鍋焼きラーメンなど、味の濃いものと合わせて提供されることが多い。

現在、高知食糧が取り扱う香り米はほとんどが十和錦で、取引している香り米農家は30戸~40戸ほどだそうだ。あらかじめ香り米をブレンドした商品も販売しており、香り米を手軽に楽しめる商品として人気がある。はじめから香り米をブレンドするのは高知県の独特の商品で、香り米を生産・販売している高知県以外の地域では、お客さまが別々に買ったお米を自分でブレンドすることが多いという。
高知食糧ではお客さまの声を取り入れて、日々研究を重ねながら、ブレンドするお米やその配合を決めている。

十和錦の見た目は普通のお米とほとんど同じで、見分けることができない。食感としては柔らかめで、香りが好きな人は普通のお米と混ぜずに、十和錦100%で炊く方もいるそうだ。在来種のヒエリ香りが強いため、普通のお米とブレンドして食べるのがおすすめだ。
どの品種の香り米も、初めて食べる方は、まずは普通のお米に10%程度ブレンドすることを試して、お好みの配合を見つけてほしい。

今後の展開に向けて

高知食糧では、香り米の海外輸出も新たに始めている。「高知県の特産品である香り米を、より多くの人へ広めていきたいという展望がありますので、国内、海外に広く発信していきたい。」と下元さんは語った。
また、高知食糧は2025年11月に“こうち米フェスタ2025”を開催した。香り米入りを含めた人気の5銘柄から、高知県産のお米を食べ比べできるイベントだ。フェスタ開催にあたっても、高知県産のお米の魅力を多くの人に知ってもらいたいという思いがあった。

栽培が難しい香り米の現在の生産量を維持し、提供することは決して容易ではない。地域の高齢化が進み、後継者不足という課題にも直面している状況だからだ。
そのため、香り米生産者である嶋内さんは、未来に香り米を残していくべく、現状を維持し安定した供給を目指して努力している

高知から届ける贅沢な香り

手を抜けば跳ね返ってくるし、手を入れた分だけ収穫量も増えて美味しいお米ができて、それが喜びになる。高知県はお米の産地としての知名度はまだ低いけど、どこにも負けんくらい美味しいから、まずは食べてみてほしい。最初は変わった香りに驚く声も聞くけど、食べてみたら美味しい、食欲が出るって定番になる人もいるよ。」と嶋内さんは語る。

高知食糧では、ブレンドする割合や銘柄、精米の技術を研究し、香り米入りの商品を販売している。高知県内のスーパーの他、土産物店、ネットショップ等で購入することができる。中でも、ペットボトルに香り米を詰めた商品は、お土産として人気が高い。
まずはブレンド10%から食べてみてほしい。その魅力に触れ、自分好みのブレンドを見つけてみてはいかがだろうか。

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