日本の遺伝子に訴えかける、土佐の極上深海醤油/畠中醤油醸造場
有限会社畠中醤油醸造場
仕込みで味に差をつける、無添加・天然醸造
畠中茂氏
一般的な醤油づくりは、炒った麦、種こうじ、蒸した大豆を混ぜて麹をつくる。麹に食塩水を入れ(仕込み)、もろみを作る。 早期に発酵させたい場合は酵母菌等を投入し、温度管理をしながらもろみを熟成させ、半年ほどで取り出し、圧搾後に加熱処理し、完成に至る。
畠中氏の醤油醸造は何が違うのだろうか。
密閉型タンクは県内唯一。
畠中醤油醸造場の歴史は約100年。畠中氏は3代目だ。物理学を学んだ経歴を持つ畠中氏の醤油づくりは、感性とひらめきを、最先端の技術と理論で裏付けてゆくとともに、発酵に必要な微生物のありのままの働きを、最大限引き出す旧来の手法が組み合わされる。
「麹を濃縮水で仕込んでいるのはうちだけです。」
畠中氏は、麹の仕込み水に室戸海洋深層水の濃縮水を使用。そうすることで、もともとある天然の酵母菌や乳酸菌の働きが盛んになり、旨みが引き出されるという。
麹と濃縮水でつくった"もろみ"は密閉型タンクに入れ、発酵過程に入る。
「密閉型タンクは20年前に考案しました。昔は木桶でしたが、雑菌汚染の恐れがあるし、蓋がないと異物が混入することもある。よほど管理が行き届いていないとよい醤油がつくれない。管理するところはしっかりしないと、せっかくの技術が無駄になりますから。」
理想を求め、ないものは自ら作り出すという、畠中氏の醤油づくりに対する熱意が伝わってくる。
麦を炒る機械も一部自作した
大豆を蒸す大釜
大豆と麦と種麹で、麹をつくる
仕込み後はもろみとの対話も大切
出来上がりました
自宅には山ほどの研究メモ
技術が進化しても、発酵過程は変えられない。
天然の菌が、呼吸をしている。12ヶ月後のもろみは、通常の醤油より赤紫色が濃くなるのが特徴。
もろみの発酵期間は一般的に6ヶ月程度とされているが、畠中は15ヶ月かける。
「早く発酵させたければ乳酸菌や酵母菌を添加し、温度管理をすれば良い。醤油としての成分は満たされますが、旨みは満足いくものではありません。本来の醤油の味をじっくりと引き出すためには、時間はかかりますが、投菌せず、本来的に存在する菌の働きを盛んにさせる旧来の方法が一番いい。」
---どうして天然醸造にこだわるのか。
「5年前、試食した10代の若者が"昔懐かしい匂い"と言いました。知るはずもない"昔懐かしい匂い"と口にしたんです。その時に、日本人の遺伝子に訴えかける醤油をつくるには、昔ながらの発酵方法しかないと確信しました。」
新旧の技を用い、日本人の遺伝子に組み込まれた味覚に訴えかける、畠中氏の醤油醸造の探求は今も続いている
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