新鮮な魚にひと工夫 吉尾水産
吉尾水産 吉尾泰美(ひろみ)
地元の魚をつかう
田野浦漁港。今はシラス漁の水揚げ漁港となっています。漁港内にはシラス干しネットがあります。
田野浦漁港では、昔から干物の加工が続いてきました。漁港で水揚げされた魚をさばいて、おばちゃんが手作りでコツコツと干物を作り、行商や商店の店先で売っていたのは昔の話。今では、田野浦漁港はシラス漁が中心の漁港となって、他の魚の水揚げ量は随分と減りました。ですが、昔からの干物作りの風習は残っています。吉尾水産では、宿毛を中心に伊予、佐賀などの近くの漁港で水揚げされた新鮮な魚を使っています(サバについては県外産のものを使用する場合があります)。ネタは全てご主人の吉尾忠泰さんが厳選したもの。
新鮮な魚をつかう
これから開きになるカマス。入荷されたばかりの新鮮なネタです。ピチピチです。
干物のネタになる魚は新鮮そのもの。生のネタを使うことが基本です。加工場のおばちゃん達が晩ご飯のお刺身にと、干物用の魚をもらって帰ることもあるそうです。仕入れたネタを、すぐに加工することも基本。
冷凍されたネタを使う加工場もありますが、新鮮な生モノを使うのが吉尾水産のこだわり! とはいうものの、主力商品であるアジ等の味は、冬場には脂が減ってイマイチ。やむなく冷凍ネタを使わざるを得ないこともあるそうです。
8~9月の旬のネタはマアジ、カマス。脂がのっているので、とってもおいしいです。その他、タチウオやアユ、タイ類の魚など、価格さえ合えば色んな魚を開きにしています。タイの干物って何とも豪華ですよね。干物の他にみりん干しと丸干しも作っています。
干物ができるまで
それでは今が旬のアジが干物になるまでを見てみましょう。
干物づくりのひと工夫
塩漬け中のネタに氷をかける作業。その他、塩漬け時間を短縮したりと、鮮度を落とさないように気配りは欠かせません。
ご主人が物心付いた時から、家では干物作りをしていたそうです。「昔は、冷凍庫や乾燥機がなかったから、干物作りは冬場だけだったね~。」とご主人は昔を振り返ります。アジやカマスといった主力ネタが旬の夏場は、ネタの鮮度が落ちやすいためほとんど干物を作らなかったそうです。逆に、干物を乾燥させるのに適した冬場はネタの種類が少ない。ん~、何とも難しいですね。
それから50年。今では機械が充実して年中作れるようになりました。そうなったのも20年程前のこと。吉尾水産では、昔と変わらない手作業とこうした機器の良いところを活かして干物作りをしています。
まずは、魚の鮮度を活かす工夫から。新鮮なネタを使っていますが、特に夏場はネタを塩水に浸している間、時間とともに鮮度が落ちていくもの。そこで、ネタを浸す塩水にアルカリイオン水を使うことで、塩が染み込む時間を短縮することが出来ます。出来上がった商品の賞味期限は、冷凍モノのネタを使ったものより長いそうです。
次に干物をおいしくする工夫。塩を染み込ませる際に、室戸海洋深層水塩や国産塩、高知県佐賀産にがりを使用することで、まろやかな塩加減にし、骨を柔らかくすることが出来ました。干物の乾燥は乾燥機を使っています。中は装置を使って紫外線を照らすようにしています。そうすることで天日干しの風味を出すようにしています。
干物を作るのに、こんなに数々の工夫していることに驚きました。
干物を食べる
吉尾水産から高知県への干物の出荷量は西部地域が断然多いそうです。「このあたりでは昔からよく干物を食べていました。」と話されるように、西部の沿岸地域では干物をよく食べる風習が昔からあるようです。また西部以外でも山間部や、高知市内の沿岸部の量販店への出荷が多いそうです。ちなみに「高知市の中心部などの量販店への出荷は少ないですし、売り場も小さいですね。」とのこと。また、「普段食べる干物には、ネタの大きさや乾燥の程度が違っていて、高知市ではカリカリに乾いた上乾のものもあるようですね。」ともおっしゃっていました。地域によって干物を食べる風習が異なるようです。
ただ、最近は干物への需要は変わっていて“中骨(背骨)なし”干物の需要が増えているそうです。骨のない干物ってアリ?と思いますが、吉尾さんは「そういう時代にあった商品を開発していきたい。」と抱負を語ってくれました。
県内量販店での店頭販売が中心。もちろんアンテナショップでも販売しています。吉祥寺高知屋にて是非どうぞ!
生産者情報

吉尾水産 吉尾泰美(ひろみ)
- 住所:
- 電話:0880-43-1252