3つのこだわり 本山町北山東生活改善グループの北山こんにゃく
本山町農業公社(担当:和田耕一)
お祝いの時は、いっつもこんにゃくを食べよった
―こんにゃく芋の山里―
手づくりこんにゃくを作っている高知県本山町は、四国の水がめである早明浦(さめうら)ダムがあるところ。吉野川の源流にあたるこの地域では、昔からコンニャク芋がよく採れてきました。本山町北山東生活改善グループの川井さんは「北山東のある吉野川北岸では、良いコンニャク芋が採れます」と語ります。夏は涼しく程良く日光が当たり、水はけが良い傾斜地がコンニャク芋の生育に適した条件。コンニャク芋を四国内の他県に出荷し、地元のおばちゃん達は、家庭で食べる分だけこんにゃくを作ってきました。日頃のおかずの他、町で何かお祝い事がある時には、こんにゃくを使った料理を作ってきたそうです。
手づくりこんにゃくができるまで
手づくりこんにゃくは、その名の通りひとつひとつ手でつくる物。そのために、下ごしらえも一苦労です。
芋は湿っていると痛みやすくなるので、こまめな管理をします。皮を剥き、下茹ですることから始まります。
これがないとやっぱりいかんねぇ
―こだわりの材料―
1.昔からの山の恵み コンニャク芋
北山東でコンニャク芋がまとまってできる場所は2箇所。その他、山道の脇など、見られる時期には山に入れば色々な場所で芋ができているそうです。「自然の芋は岩の間から出てくるがですよ」と説明してくれました。原材料のコンニャク芋は、昔からある在来種の生芋のみを使用。カボチャのような形をした2~3年経ったものを使います。「在来種は、病気に弱うてできん年もあるけんど、これを使うたら歯触りが良いこんにゃくができます」とも。町内で採れたそんな芋を色々な所から購入して集めています。
2.山のくらしの産物 灰から作った灰汁
すりつぶしたコンニャク芋を固める凝固剤には、昔からブナ・ナラ、カシなどの広葉樹を燃した後にできる灰を湯にくぐらせて作った灰汁(あく)を使ってきました。「昔は、この灰汁だけを使いよったけんど、今はそれ程濃いのが取れんでねぇ」と灰汁を見せてもらいました。においを嗅ぐと、木が燃えた後の灰のにおいがします。今では、この琥珀色の灰汁が手づくりこんにゃくの一番のこだわり。「これやないと、良い風味が出んがです。手間暇かけるからこそ、昔ながらの本物のこんにゃくができるがやと思います」と語ってくれました。
最新の技術を取り入れながらも、昔ながらの手づみと、昔懐かしい加工場でつくられるお茶は、心も体も温めてくれます。
3.ここで作るこんにゃくにはここの水を 山の清水を使用
重さでいうと、こんにゃくのほとんどが水分。糊化させたコンニャクマンナンを凝固剤で固めるので、練り込む時に入れる水は、ゆがく時に抜ける分以外こんにゃくの中に閉じこめられます。だからこそ、使う水は大切。山の頂上付近に湧き出る清水を、簡易水道として使っています。「ここの水はおいしい言うて、街の人が汲みに来ます。他(の場所)でこんにゃく作りをしたらという話があったけんど、やっぱりここの水やないと合わん」そうです。
手づくりこんにゃくのこれから
北山東生活改善グループでこんにゃく作りを始めたのは、本山町で良心市を出そうということになった昭和50年代初頭。地元ならではのものを売り出そうと、町内の集落ごとにグループが結成され、北山東では昔から作り続けてきた、こんにゃくを商品化に。当時は始めたばかりで「田んぼの端で、ブルーシートをテントにして、ドラム缶で茹でた」そうです。昭和60(1985)年に、県の補助事業で加工場を建設。その後、町の協力があって加工に必要なミキサーやボイラーを導入し、生産量を増やしていきました。
グループ結成当時いた17名のメンバーも「もう帰って来れん処にいってしもうた」というように、徐々に減り、現在製造作業はほぼ3名で行っています。過疎化と高齢化の影響を受けているこんにゃく作りですが、気になることがもう一つ。「体が動くうちは作り続けるけんど、灰がないなったらできんなることが心配」と話されていました。昔は雑木林で集めた薪をお風呂やおくどで燃やしていましたが、今はそうする家庭は少数。山から切り出される広葉樹が少なくなったことも影響しています。口に入れるものなので、薪風呂できれいに火を焚いた家庭や、芋の取引先、製材所やシイタケ農家など信頼できる人から、灰やそのもとになる薪を入手しています。
「けんど、私らぁの代でこの火を消す訳にはいかん」と、最後に意気込みを語ってもらいました。
手づくりこんにゃくを食べるには
昔から北山東では、こんにゃくを“お白和え”にして食べてきました。その他、さしみや田楽にしても。さっと湯に通して、ぽん酢しょうゆで食べると、柔かな歯ごたえと苦みのない、ほのかな甘味のする優しい味を楽しめますよ。もちろん冬の時期は、おでんや煮物にピッタリ! だしがしっかりと染みこみます。
手づくりこんにゃくの製造は週に1回。県内量販店や本山町「さくら市」などで販売中! 高知県アンテナショップでは吉祥寺高知屋で販売しています。北山東のおばちゃん達が作った山の味を是非どうぞ!!
生産者情報

本山町農業公社(担当:和田耕一)
- 住所:
- 電話:0887-76-4333