育て方も味も、自分たちのこだわりを信じて/四万十うなぎ-大前達也さん
四万十うなぎ株式会社
あまり知られてはいませんが、高知県ではうなぎの養殖業が盛んに行われています。その中で、養殖だけにとどまらず多彩なオリジナル商品の加工・販売も手がけ、急成長を遂げているのが「四万十うなぎ株式会社」。
困難を乗り越え、こだわりとチャレンジ精神を抱き続ける二代目・大前達也さんにお話をうかがいました。
清流・四万十川の恵みを、自然のチカラで大切に育て上げる
同社のうなぎは、四万十川で獲れた稚魚を養殖したもの。天然ものにも引けをとらない味わい、香り、食感が人気を集める理由です。
しかし、このおいしさに育て上げるまでには、毎日地道に積み重ねていく努力が必要と大前さんは言います。
「うなぎを育てていくうえで大事なことは給餌。朝、池を一つ一つまわってうなぎに『今日はどうぜ?』と聞いちゃるんです。そうしたらうなぎがこっちをじーっと見ながら、『今日はあんまりいらんぜ』とか『今日はうんと腹減っちゅう!』と言うてくる。それをきちんと感じとっちゃらんといかん」
長年、うなぎと向き合ってきた職人にしか分からないものがそこにあるようです。そして、その餌そのものにも同社ならではのこだわりがありました。
アジなどを使った一般的なうなぎ専用のエサに、天然のビタミンやスケソウダラから取った油分、臭みを自然にとる納豆菌などをバランスよく配合。さらに、うなぎのストレスを緩和させるために加えているのが、ミネラル豊富な四万十川の川ノリ!人間が食べてもおいしい川ノリを惜しみなく与えていて、ちょっとうなぎがうらやましくなってきます。
「人間の都合だけではいけない。自然の恵みを与え、うなぎの呼吸に合わせながら自然に育てていく」
土佐弁で頑固な男性のことを『いごっそう』と呼びますが、まさに大前さんはいごっそう。そのこだわりがおいしいうなぎの秘訣なんでしょうね。
過去には想定外の困難が。乗り越えた今も、初志貫徹!
真面目にうなぎを育ててきた同社ですが、過去には困難もあったそうです。
燃料高騰の影響を受け、気温の低い四万十町で飼育するのが厳しく、そのため高知県内の温暖な場所にある養殖場で飼育をしてもらい、それを同社で加工・販売していた時期もあったとのこと。
しかし、大前さんはもう一度四万十町で、自分たちの手で育てたうなぎを販売しようと決心。燃料高騰問題を打開すべく知恵をしぼり、たどり着いたのがバイオマスボイラーだったそうです。バイオマスボイラーは日常生活で出た廃材や紙くずなど資源ゴミをチップにしたものを燃料とし、環境に優しいことから注目を集めているボイラーです。
それが成功し、四万十町でも安定した環境の中で育てられるようになったそう。
それからも努力を積み重ね、四万十うなぎはブランドとして確立しただけでなく、多くのファンから愛される存在へと成長しました。
しかし、大前さんは今の状況に甘えることなく、いつまでも初心でがんばっていこうと従業員たちに語りかけています。
「流れ作業で商品を作り、それが売れたら良いではいかん! お客さまが食卓で食べたときの笑顔を思い浮かべて作ってほしいと、つねに従業員に伝えています。直接販売ができるイベントがある時には出店し、従業員全員でお客さまとふれあい、その気持ちを忘れないようにするのも私たちの大切なこだわりです」。
製造から販売も自社で!オリジナル商品の多彩さも自慢
蒲焼きや白焼きなどの定番商品をはじめ、「うなぎちまき」など多彩な商品展開でも好評を集めています。商品化に対するこだわりは、うなぎ本来の味を逃がさないこと。
「蒸しすぎるとうま味を持った脂まで逃げてしまう。かといって、べちゃっとした食感のうなぎもだめ。食べた時にブリブリとした食べ応えがあってジューシーなのが四万十うなぎ。蒲焼きに使うタレも無添加。昔ながらの醤油、みりん、砂糖の基本の味で勝負。周りに振り回されてしまわないよう、自分たちのこだわった味を持っていないと」
ちなみに、大前さんは白焼きをアレンジしたうなぎのタタキが好物なんだそう。
これはぜひ試してみたい逸品!
おすすめの食べ方
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●四万十うなぎのタタキ白焼きを一度炙って一口大に切り並べる。その上にスライスしたタマネギ、ニンニク、ネギ、レモンをのせて、上にポン酢をかければ完成。 |
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高知の、そして日本の養鰻業界をも変えそうな大きな計画
大前さんは以前より壮大な夢を持ち続け、その夢はまもなく現実のものになろうとしています。
「四万十町内に新たな養鰻場を建設します。面積は約2平方キロメートル、出荷量として200トンクラス。養鰻業の間にも生産者の高齢化や跡継ぎ問題があり、このままでは高知の養鰻業が廃れていくかもしれない。おかげさまで今までやってきてしっかりとした自信もついたので、やってみよう・がんばってみようと決断しました。
『高知には、四万十には、四万十うなぎがある!』と言うてもらえるようにがんばっていきたい」
高知を代表する食べ物といえばカツオやユズ…そこに「四万十うなぎ」の名前が並ぶのも、そう遠くはなさそうです。
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