高知県産木材に抜群の機能性を取り入れた木工生活用品/株式会社土佐龍
株式会社土佐龍
17歳で抱いた夢を実現!
マーケティング力と開発力を活かして高知の逸材を世界へ
高知県産木材に抜群の機能性を取り入れた木工生活用品を次々と世に送り出す「株式会社土佐龍」。その商品は、日本国内のみならず海外でも人気を集めています。
「地球の裏側からも注文が入るようになったけんど、土佐弁しか知らんき困っちゅう」
とユーモアたっぷりに話すのは創業者である池龍昇さん。
池さんは17歳の時に「社長になりたい!」という漠然とした夢を抱き、大阪で商売の修行を積みました。木工品と向き合うようになったのは25歳の時、仙台で民芸品のコケシを作るところを見て「これが自分の仕事や!」と直感的に感じたことがきっかけでした。
「大阪で商売の勉強をしていたから、私は物事を始めるときに必ずマーケットを見るくせがある。その時も“高知では何が売れるだろう?”というところから考えたんです」
その答えは高知の闘犬「土佐犬」の木彫り人形でした。池さんによると、昭和40年代は高知へ訪れる観光客がどんどん増えており、加えて当時は旅行へ行くというと親戚や近所からも餞別をもらう風習があり、土産品をたくさん買う傾向にあったんだそう。買い求めやすい値段設定と土産にぴったりの高知らしさが人気を集め、瞬く間にヒット。
35歳の時には約40人の職人さんを抱える四国でも有数の企業に成長。しかし、常にマーケットを見つめていた池さんは自ら転機を先読みします。
「土産品は地方へ人が来ないと売れない。このまま地方だけで商売をしていてはいかん。全国で売れるものを作らないかんと感じたんです。木製品でも家具など大きいものは流通が難しいので、キッチン用品やお風呂用品がいいなぁと思っていた頃、タクシーの運転手さんと話をしていて『一番いい木は何だと思う?』と聞くと、『そりゃヒノキよね』という答えが返ってきたんです。調べてみたら、高知県はヒノキの産地で、高知県産ヒノキには油成分が豊富ということが分かった。つまり、水に強い。そこで『よし、まな板を作ろう!』と思い立ったんです」
池さんはすぐさま商品化して全国へ売り込みに走りましたが、「たとえ良いものでも、昔からの取引先があるから簡単に乗り換えるわけにはいかない」となかなか取り合ってもらえなかったのだそう。
しかし、諦めない池さんは何かあるはずだとマーケットを見つめ続けました。そこで、和風の台所から洋風のキッチンへと移行してきていることに着眼。これまでにない洋風デザインのまな板を作り、再度売り込みをしたところこれもヒット!さらに、実際に使ったお客さんから「たしかに高知のヒノキは良い!」と評価が高まり、市場でのシェアを確立したのです。その後もどんどん他にはないものを作り出し、土佐龍には現在380種以上の商品があるとか。
「まな板一つとっても奥が深く、お客さんによってさまざまな要望がある。商品開発の主役はお客さんなんです。要望を聞いたらその日の晩には形にする、そのスピード感も大事。私は会社を大きくしていくつもりはない。ただ、うちの商品を使ってくれるお客さんの満足度をもっともっと高めていきたい」
数ある商品の一つ一つには努力と思いが詰まっているのです。
まな板、入浴剤…、
大ヒット商品誕生の影に隠された揺ぎないこだわり
土佐龍を代表する商品といえば、スタンド付で自立するまな板。多くの人が「あったらいいな」と理想していた商品を「なるほど!」と思わせるアイデアで実現したこの逸品は、著名人からも愛用品として紹介され、爆発的ヒットとなりました。
誕生までに試行錯誤があったのでは?と思いきや、意外にも池さんは「簡単だった」と振り返ります。
「まな板を洗った後、寝かせて置くのは気持ち悪い。なら、立つようにすればいいじゃないかという簡単な発想で生まれた商品。スタンドはすぐ目に入るように木の種類を変え、色の差を出した。どうやればお客さんが使いやすいかを考えれば、おのずとそれがデザインになる。うちが考えるデザインとは機能なんです」
最近の新商品である孫の手も池さんの自信作。
「妻に背中をかいてくれと言うたら『いや!』と言われてね。でも、既存品は肌に痛かったから自分で研究したんです」
池さんは使いやすい・使って気持ちいい角度や形を追求。数千本の注文が入るほど、早くも人気商品に成長しているのだそう。
「もちろん最初からうまくはいきませんよ。でも、やれん理由ばっかり考えたらなんにもできん。一つでも二つでもできる方法を考えよう」
お客さんの思いや自身の思いをどんどん形にしていく池さんは、新製品の社内コンテストなどを通じて、若手職人たちにもその発想力や開発力を伝授しようとしています。
森を育て、森を生かし、森の未来を創る、木の料理人
数ある商品の中に、木を扱う者としての強い思いが詰まった商品があります。それは木屑が詰まった小さな袋をお風呂に浮かべてヒノキの香りを楽しむ入浴剤です。
「山へ行くと、間伐した木が使われることなくそのまま残っているんです。それを見て私は、木がかわいそうなと思いました。木は水も空気も供給してくれよったんやから、最後の端まで大事に使わないかん。なんとか商品にしたいと思っていたら、高知の大野見という所でヒノキの葉でオイルを作りゆう人がおると聞いたんです。さっそく飛んでいって、分けてもらったオイルを木屑に染み込ませてチップを作った。そうしてできたのがこの入浴剤」
製品の加工段階で出る木屑までも価値のある商品として世に送り出す。それはまさに山への感謝の気持ちの表れであり、山を守ることへと繋がっています。
「高知県の森林率は84%。海岸線にはクスノキ、中腹のほうへ行くとヒノキ、スギ、サクラ…と、とにかく森林資源が豊富。さらに、山は空気も川も海もきれいにしてくれる。ミネラル分も流れていくから魚が多くなり漁業も潤う。ところが山は間伐して守っていかなければならない。そのためには資金がいる。つまり山の資源をお金に変えないかんのです。小さな力かもしれんけど、私たちもその一端を担っていきたいですね」
そして、最後に池さんは毎朝社員一同で唱和するある一つの言葉を教えてくれました。それは「私達はお客様に喜ばれる木の料理人として働きます」。
「料理人は頼まれたらパパっと作って持ってきてくれる。料理を作るための道具を大事にする。そして、材料を大事にする。頭から骨まで使いきろうとする。私達は木を材料とする料理人『木の料理人』を目指しゆうんです。木を最後の端まで全て生かしきることが、私達も生かされること。山へ、木への感謝の気持ちは絶対に忘れたらいかん」
今日も池さんは、若い職人達とともに新しい木の活かし方を考えています。そうして生まれた商品は、私達の暮らしに感動や喜びを与え、木の素晴らしさを教えてくれるでしょう。
土佐龍のオススメ商品
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スタンド付まな板回転式のスタンドによって垂直に立てることができるまな板。 |
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孫の手池さんが研究を重ねてたどり着いた孫の手。 |
お箸ケースマグネットが埋め込まれており、簡単に開閉ができる優れもの。 |
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入浴剤ヒノキのチップにヒノキオイルを染みこませた入浴剤。 |
生産者情報
