自然と人をつなぎ、人と人をつなぐ/宝石珊瑚グループ SeaProof(シープルーフ)
シープルーフ事務局
高知の珊瑚業界の二世・三世が生み出す、
宝石珊瑚の新しい魅力
世界有数の宝石珊瑚生産地である高知県には、日本の宝石珊瑚業者の約8割が集約しています。業界の中心として、また、世界の宝石珊瑚文化のけん引役として軌跡をつくり上げてきたのは、高い技術と志を持った宝石珊瑚従事者たちです。時代の変化とともに宝石珊瑚業界も変化の真っ只中にいますが、その尊い伝統文化を守ろうと、2007年に高知から新たな宝石珊瑚ブランド「SeaProof(シープルーフ)」が誕生しました。
シープルーフのメンバーは、伝統を受継ぐ二世・三世の若手有志たちです。
「宝石珊瑚は高齢層が持つイメージが強く、若い世代にとっては遠い存在でした。シープルーフはその若い世代をメインターゲットとして、日本が世界に誇る宝石珊瑚の魅力をもっと広めていこうというコンセプトのもとスタートしました」そう教えてくれたのは、グループの代表を務める近藤健治さん。
国の補助金対象事業として、新しいマーケティングやブランド、商品アイデアを練り、ギフトショーやスノーボード関係の展示会などに出展。メンバー全員がそれぞれの本業をこなす中での活動ということもあり時間の制約など課題もありましたが、地道に一歩一歩前進しています。その支えとなっているのは、「珊瑚の未来をなんとかしなければ!」というメンバーの熱い思いに他なりません。
若い世代の心をつかんだのは、
珊瑚が持つ古き良き伝統とありのままの美しさ
シープルーフが展開するアクセサリーは現在、2シリーズあります。
「ナチュラルなデザインで、珊瑚の良さをそのまま楽しんでもらおう」というコンセプトのもと誕生したのが『moon(ムーン)』と名付けられたネックレスです。価格は1万円前後。丸い球状に削った珊瑚に革紐を通したシンプルなデザインは普段着に合わせやすく、男女問わず珊瑚を気軽にオシャレに楽しむことができます。珊瑚の色合いや質感も多彩で、ツルッとした艶感があるものもあれば、小さな穴が無数に開いたものもあります。
「これは海流や砂によって浸食された珊瑚で、『すだま』と呼ばれるものです。品質的にはとても面白いのですが、これまで高い価値があるものとして扱われることはありませんでした。それゆえに比較的低価格で販売することができ、メインターゲットである若い世代の方から人気を得ることができました」(近藤さん)
『すだま』は昔もこうして球状に削られて、かんざしに利用されていたそうです。時代がめぐって再び同じ形で日本人のオシャレに華を添えるようになったことに運命的なものを感じます。
そして、もうひとつのシリーズが女性のためのブレスレット『avecmere(アヴェクメール)』です。こちらのコンセプトの元になったのは、珊瑚に残る言い伝えや風習です。珊瑚は古来より「女性のお守り」といわれ、厄年を迎える女性が厄除け石として持ったり、結婚・子授け・安産など女性の人生のあらゆる場面において珊瑚アクセサリーを贈る風習が、今も世界各国に残っています。
「アヴェクメール」は、そんな珊瑚が持つ意味合いを活かしながら、現代の女性たちのセンスや生活様式にマッチさせたデザインに仕上げました。色味はファッションやTPOを選ばないコーラルピンクをチョイス。中糸には忙しさの中でも着脱しやすく、アレルギー性の少ないシリコンゴムを使いました。そして、よりオシャレを楽しみたい方のために、繊細な彫刻を施したチャームもラインアップ。ここには高い加工技術を持った高知の珊瑚職人の技が活かされています。また、高知県西部には赤ちゃんが誕生すると珊瑚の腕環を贈る風習があり、珊瑚が熱で曇る性質を利用して発熱を察知したと言われていること、英国王室では女王が誕生すると一年間はお守りとして珊瑚のネックレスをベッドにかけておく風習があることから、ベビーサイズのブレスレットも制作。出産祝いの記念品として高い人気を集めています。
女性メンバーの一人である前川やよいさんはブレスレットの魅力をこう教えてくれました。
「色も風合いも自然が生み出した珊瑚は、同じもの二つとないので記念品に最適。また、磨き直しもできるので次世代へ引き継いでいくものとしてもぴったりなんです。子どもが成長した時には玉やチェーンを足して、新たなアクセサリーとして楽しむこともできます。母から娘へ、パートナー(男性)からの贈り物としても喜ばれると思います」
珊瑚の優しい色や風合いが、人の温かみを表しているように思えるブレスレット。身につけるだけで女性らしさがアップしそうです。
「珊瑚がサンゴを救う」
大切な海を守るための活動にも力を!
シープルーフのアクセサリーは、参加した展示会やギフトショーで大きな反響を集めました。その一方で、メンバーは予想していなかった反応を目の当たりにします。
「高知県では高い認知度を持つ宝石珊瑚ですが、県外では『知らない』『見たことない』という方が多かったんです。特に、『珊瑚を採取していいのか』『自然破壊じゃないのか』という疑問は多数寄せられました。珊瑚=造礁珊瑚のイメージが先行していたんです」(前川さん)
自然環境保護の象徴としてイメージされる珊瑚は「造礁珊瑚」と呼ばれるもので、アクセサリーや工芸品として使われる「宝石珊瑚」とは異なるものです。採取に関しても珊瑚漁船の操業は公的な許可が必要であり、操業区域の限定や漁法規制、操業期間や時間帯の限定、漁獲の報告義務など乱獲を防ぐための厳しいルールを設定し、環境保護に配慮されています。
「限りある資源を大切にしてきたことで、宝石珊瑚の伝統や文化は成長できたのだと思います」(前川さん)
珊瑚のこと、自然のこと、そして、自分たちの思いをもっとたくさんの人に知ってもらおうと、シープルーフのメンバーは『セーブ・コーラル・リーフス~珊瑚がサンゴを救う~』を合言葉にした啓蒙活動にも取り組んでいます。地元の海岸の清掃活動、珊瑚に触れるワークショップ、造礁珊瑚種苗の植樹、有名女優をゲストに招いた珊瑚トークショーなどを開催。宝石珊瑚の売り上げの一部を造礁珊瑚の保護活動へ寄付し、宝石珊瑚を通して海を守ろうとしています。
「他の宝石と比べると地味かもしれませんが、珊瑚には温かみがあります。もともと珊瑚は生命を持った生き物だったから、温かみを感じるんだと思うんです。シープルーフの商品や啓蒙活動を通して、宝石珊瑚を美しさを感じていただき、この美しいものをどうすれば未来に残していけるのか?と考えるきっかけづくりができればいいですね」(近藤さん)
美しい宝石珊瑚と母なる海を守るために活動を続けるシープルーフのメンバーたち。熱意溢れるその姿に、宝石珊瑚文化の中心的役割はやはりここ高知県であることを再認識することができました。
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